全国にある和紙の種類は、およそ100種類と言われています。
無形文化財としても登録されている、「日本の手漉き和紙」。
障子やふすまなど日本の家の風景に彩りを与えてくれる和紙は、繊細ながらも丈夫さがあり、生活の様々な用途で使用されています。
 
今回、石川県の伝統工芸「二俣和紙」を使ってアクセサリー作りを行う北美貴さんにお会いしました。
石川県金沢市二俣町で製造される和紙のことを二俣和紙と呼びます。
この和紙の歴史は深く、1300年前にさかのぼり、発展していったのは1952年以降のこと。金沢二俣が献上紙漉き場として、加賀藩の庇護を受けることになり美術工芸用の紙として使われるようになったそうです。
二俣和紙は現在3軒の職人によって継承されています。希少伝統工芸とも呼ばれ、職人の手によって一枚一枚漉いてつくられます。
 
北美貴さんがつくる手漉き和紙をつかったアクセサリー「murmur」は、身につけたときの和紙独特の透け感と軽やかさが特徴。二俣和紙のきめが細かく、繊維が長いため折りがつきやすい点を活かし、素材の可能性を広げています。和紙のやさしい風合いや、美しい和紙に文字を書き綴る魅力を知る方は多いと思いますが、今までになかった新しいかたちで伝統工芸の魅力を伝えている北さん。
北さんが二俣和紙を使ってアクセサリーを作ろうと思ったきっかけ、金沢で広がった伝統工芸との関わりについてお話をうかがいました。
 
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もともと内装設計の仕事をしていたので、そのとき壁に和紙を貼ることが多かったんです。店舗の壁紙を選ぶとき、和紙を採用することが多かったので和紙自体には馴染みがあったんですね。
ただこのmurmurをつくったきっかけは、それとは直接関係なくて。たまたま自宅で切り絵や折り絵を飾っていたら、紙だから折り絵がシナシナになっていくんです。その紙の様子をみていて、これを樹脂で固めたらどうなのかなと思いました。ちょうど花器をつくりたいなと思いエポキシ系の樹脂を買っていたので、それを使ってノートの切れ端やそこらへんにある紙を固めてみたら面白かったんですね。そのとき、ふと和紙はどうかな?と思って和紙を取り出して固めてみました。やってみると和紙の固まった様子がいちばんきれいで、和紙というものがすごく素敵になるんだということがわかり、2年ほどの追求がはじまりました。でも実験的にやっていたことなので販売することは想像もしていませんでした。
 
縁があって金沢に移住し、できれば金沢の和紙を使いたいと思っていて金沢にある和紙屋へ行きました。でも探してみると金沢では染めているけど、漉いたのは別の土地というのが多く、いきつけなかったんです。
そんな中つくっているうちに二俣和紙の卸しをされている方に出会い、その出会いが二俣和紙という存在にぐっと近づくきっかけとなりました。和紙を漉いている作家の方にもお会いし、二俣和紙でアクセサリーをつくることを確認したら、和紙は素材なのでどんどん使ってくださいとお話しいただきました。私は金沢への移住者だったのですが、そんな経緯があり、使わせていただいています。
 
 
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▲北さんの作品に使われている二俣和紙は楮紙と落水紙の2種類。二俣和紙は、原料になる楮(こうぞ)の剥皮作業、煮熱、水洗い、紙漉き、圧搾など12の工程を経て和紙に。独特の光沢、長い繊維が二俣和紙の特徴だそう。 
 
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▲二俣和紙は繊維である楮が長く、一度折るだけでしっかり折れ目がつく。つくるときは和紙の美しさが半減しないようにと慎重に樹脂をのせるんだそう。用途は工芸紙や箔打紙、加賀奉書、帯やバックなどに用いられる紙衣などに活用される。
 
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▲「murmur」海シリーズのhana と jelly fish
シリーズの海 空 植物は金沢に引っ越したことで感じた、自然の豊かさを表現
 
 
 
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▲繊細でやわらかな雰囲気を持つピアスは着物とも好相性
 
二俣和紙を使ってみたら、二俣は繊維が長いので折りがしっかりとしているんですね。その表情が今まで使ってみたものよりどの和紙よりも良く、いまのデザインの形状に繋がっています。
 
私は店舗設計の仕事を経て、その後プロダクトのデザインをしていたので販売する機会等も巡ってきて、自分の中での可愛いと思うもの、自分の表現と考えるものだったので、限定で販売をしてみたんです。そしたらたくさんのかたに目の前で喜んでいただいて、その笑顔がすごくうれしかったんですね。
創作を続けていたら、石川県の工芸品など扱う物産展に出させていただく機会をいただくようになりました。
でも多くの金沢の工芸品と交えて出させていただくとき、歴史ある高価な工芸品の中で自信がなかったんです。プレッシャーがあり、自分なんかが出ていいのかなと。そんな弱気な自分の態度にお叱りをいただいたことがありました。せっかく誘っていただいたのに、私なんかという気持ちが外に現れてしまっていたんだと思います。
 
石川の工芸を代表する方々と一緒に出させていただいても恥じないようにと思いました。自分は自分の表現方法で丁寧に気持ちを込め作り上げている事に自信を持とうと。
今はすべて自分の気持ち次第と思って、いろんな場に出させていただいています。作品を通じて、心に訴えかける何かを感じていただけたら嬉しいです。
 
 
 
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北 美貴
 
東京都生まれ。東京理科大学卒業後、桑沢デザイン研究所にてデザインを学ぶ。その後、spin off 塩見一郎氏に師事し店舗設計の経験を積む。その後フリーランスデザイナーとして活動。作品の範囲は生活雑貨から家具、アクセサリーまで幅広い。公園のベンチや芝生の上に座る時にふわりとハンカチを敷いてあげる。そんな人が人を想う優しさを表現した「風のスツール」や自然界の様々なかたちを表現した「murmur」がある。
 
 
 
murmurは 渋谷東急百貨店東横店 西館1階 「IROZA」、東急プラザ表参道原宿4F「kimono by nadeshiko 原宿」、三越多摩センター1F「神保町いちのいち」、ZOZOTOWNなどで販売中。
詳しくは、http://www.jul.jp/