2017年11月8日
自分が一番美味しいと感じるポイントをまるで旅するように探す酒器/ 島田 律子
伊賀焼の産地、三重県・伊賀市へ行ってきました。
緑に囲まれた伊賀は、暑さを感じさせない透き通った空気が流れています。
山間には伊賀焼の窯元が二十数軒集まり、隣の信楽焼(滋賀県)の産地まで車で10分ほどと、沢山の窯元が集まっているまさに焼き物の里と呼べる地域です。
今回お伺いさせて頂いた土楽窯さん
伊賀焼の歴史は古く、起源は奈良時代までさかのぼります。当時は、土の風合いや炎が生み出す日本人らしい微妙な変化を表現に取り入れた、個性的な茶道具の産地として知られていましたが、江戸時代の中頃には耐火のある伊賀の土をいかした土鍋などの日用雑器の生産が行われるようになりました。
今回お伺いさせて頂いた土楽窯も、土鍋をメインで作っている窯元の一つ。その一つ一つがろくろと職人による手づくりで、温もりのある自然な風合いが特徴です。
土楽窯の土鍋は、全て職人による手づくり。ろくろで制作した鍋を削る作業です。
土楽の土鍋は美しい。
量産品とは違い、一つ一つ手で作られた土楽の土鍋は、丈夫さだけでなく、器としての美しさを絶賛する方が多くいます。料理を引き立てることはもちろん、そこにあるだけで心にゆとりが持てるような、そんなパワーを持っている土鍋。量産品に比べると少し価格は上がりますが、その美しさと使いやすさから多くのファンがいます。
土楽の土鍋には、何にでも使える黒鍋やご飯を炊くごはん鍋、煮込み用の鍋やポトフ用のお鍋など、沢山の種類があるのも特徴的です。
50年前から変わらないものや、現代の食事に合わせて新しく作られたものまで、形や用途も様々ありますが、どれも共通しているのが料理のために作られているということ。その料理がいかにおいしく作れるか、ということを大前提に、ごはん鍋ならご飯が滞留せずふんわりと炊ける形状を、そして主役であるごはんが引き立つよう、料理人でもある職人の福森さんの手によって、何度も改良を重ねて作られています。
「土鍋をもっと楽しんでもらいたい」という福森さんは土鍋で気軽に作れる料理を日々研究中。「水炊きしか使ったことがない方が多いと思うんですよね。でも、土鍋は焼いたり蒸したり煮たり炊いたり、色んな使い方ができるんです。土鍋で炊いたごはんなんて格別ですよ」
福森さんの土鍋のレシピ本には、沢山の料理が掲載されていて、どれもなじみのある料理ばかり。じわじわと温かくなる土鍋の特性が素材の旨味をしっかりと引き出し、芯まで味をしみ込ませるそう。
食と向き合いながら土鍋をつくる福森さんだからこそ、表現出来る美しさと美味しさを兼ね備えた土鍋。根強いファンが沢山いるのも納得です。
作品を焼くという窯もとても美しいです。
美しい緑、透き通った空気、のどかな風景…
そんな場所にあるものづくりの現場、特に木や土ものなどの自然素材を扱う工房は、一見ゆったりとした時間が流れていそうにも見えますが、工房に一歩足を踏み入れると、ピンと張りつめたような緊張感のある空気を肌で感じることができます。
その空気は目に見えるものではありませんが、きっとそこに立てば誰もが感じることができるはず。
数十年、数百年と受け継いだ伝統なのか、職人の集中力なのか、自然素材のもつ力なのか、、、その空気の元となるものが一体何なのかは分かりませんが、その空気は心を落ち着かせて、身体の内からパワーを湧き上がらせる、そんな神聖な力を持っています。
この伊賀の地も例外なく、まさにそんなパワースポット的な場所。
歩いているだけで心が落ち着く、とても素敵な産地でした。
土楽窯の近くにあるgallery yamahon / cafe noka さん。とても落ち着く、素敵なギャラリーです。こちらも合わせて訪れて頂きたい場所です。
土楽窯
〒518-1325 三重県伊賀市丸柱1043
ギャラリー:11:00 ~ 17:00(不定休)
※工房ギャラリーへ訪れる場合は必ずお問い合わせください
gallery yamahon / cafe noka
〒518-1325 三重県伊賀市丸柱1650
営業時間:11:00〜17:30 (火曜定休)
http://www.gallery-yamahon.com/