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どこの産地も苦戦をしている!
高い研究技術が必要な焼き物リサイクル

だれもが1日のなかで使い、生活必需品である「食器」。

使い手が直接くちをつけて食事に使用することから中古品の需要がほとんどなく使わなくなったうつわはやっぱり「捨てる」ことが多いのではないでしょうか。

私たち日本人が親しんでいる和食器は、手で持って使うものが多く、手触りや口あたり、素材それぞれの風合いを重視した焼き物が数多くあります。そこには作り手の工夫があり、あたたかな和の風景を食卓に広げてくれます。

しかし一方で焼き物は一度焼き上げると千年経っても土にもどりません。また資源を再生するのがとても難しい素材なのです。

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GL21プロジェクトを簡単に言うと?

Green Life 21プロジェクトは、美濃焼の産地、岐阜県東濃地方で行われているエコプロジェクトです。家庭、レストラン、カフェ、給食などで使われてきた使用済み食器を回収し粉砕して”食器くず”にし、食器くずを陶土に加え合わせて陶磁器(注1)をつくる坏土(注2)に再生します。その際坏土全体のうち食器くずの割合は20%で、環境負荷の少ないものづくりを目指している活動です。
GL21は上記のような環境に配慮した陶磁器産地の形成をテーマに、地元の企業や試験研究機関が1997年6に設立。 この食器くずをロクロや鋳込み(注3)で成形し焼成することで、かけがえのない地球のかけらを新たなうつわのかたちで再生することができるのです。
 
注1:セラミックの一種で、土を練り固め焼いて作ったものの総称。うつわ以外の工業用セラミックも指す 
注2:陶磁器の素地をつくる土のこと
注3:石膏型に流し込むこと
 
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1000年経っても土に還らない焼き物だから、
きちんと焼き物の在り方を考える
このエコプロジェクトを実施せずに今まで我々はどう処分していたかというと、その多くは不燃ごみとして廃棄し、ごみのカサを減らす処理をして、埋め立て地へ処分してきました。焼き物の原料である粘土は土から採れますが、1000年経っても土に還らないのに処分方法は「埋め立て」しか手段がありませんでした。
 
3.jpg▲GL21プロジェクトで回収した古食器。役目を終えた業務用の食器も多い
 
美濃焼って?岐阜県東濃地方はどんなところ?
 
「美濃焼」は、多治見市・土岐市・瑞浪市・笠原町で生産される焼き物の総称。GL21プロジェクトが行われている東濃地方は、業務用や家庭用食器など約4割の食器生産を担い、食器以外のタイル等の陶磁器を含め日本全体の約6割を生産しています。
もともとこの地域は焼き物の原料となる粘土や窯を焚くための燃料が豊富であり、古墳時代のころから陶質土器がつくられ、隣県の瀬戸とともに大窯業地帯を形成しています。セラミックは硬くて耐熱性、耐食性、電気絶縁性などに優れ、レンガやタイル、医療関連などあらゆるものに使用されています。
 
 
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多くの作家に影響を与えている美濃・瀬戸
岐阜県の焼き物は、伝統的工芸品に指定されているのがなんと15種類もあり、代表的なものに瀬戸黒、黄瀬戸、志野、織部があります。人間国宝とされる重要無形文化財保持者として認定される陶芸家も数多く生まれています。
 
 
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新しいセラミックスの創造を支える技術研究
 
伝統的な焼き物をつくる一方で、地場産業としての窯業も栄えている地域であり、自動成形ライン、トンネル窯、絵付け転写などの量産技術・設備の導入によって国内有数の大産地に成長してきました。個人で営む窯元から製陶所、販売店まで、この地方に住む多くの人々が焼き物のプロであり、生業としているのです。
 
 

 

▲素焼きされた器にシリコンパッドで絵柄を印刷している様子。

 

 
なぜ、焼き物リサイクルが難しいのか。 
日常で使っているうつわの材質、詳しく知っていますか
 
日常で使っているうつわが磁器なのか陶器なのか、意外と分からないもの。でもポイントさえ掴めば一目瞭然。知るとだんだん面白くなり、虜になってしまうのが「うつわ」の魅力なんです。
 
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GL21 プロジェクトのキーパーソン
今回、リアルジャパンプロジェクトは、3人のプロフェッショナルにお会いしました。
スタートラインに立つことすら難しい”焼き物リサイクル”は、環境団体やエコ志向の作家やプロダクトデザイナーからいま注目を集めています。自然と共存する価値観は変わることのない心の豊かさなのかもしれません。
 
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▲ 左) 岐阜県セラミックス研究所時代から陶磁器の技術支援を行う研究者の長谷川さん。「GL21プロジェクトも日本の伝統や技を活かす中でよき製品を社会に届けたい」と、このプロジェクトの立役者的な存在。右) 岐阜県土岐市で窯業原料の製造加工を行う神明リフラックスの宮地さん。国内唯一の食器粉砕機を持つ神明リフラックスは、東濃地方ならではのGL21の取り組みを支援しています。
 
インタビュー GL21プロジェクト副理事 
市原製陶株式会社 代表取締役社長 金津 洋一さん
 
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新たな業界スタンダードや技術を生み出すには、それを支える想いがあります。
GL21プロジェクト副理事の金津洋一さんへ「いまの想いと今後の展望」についてお話を伺いました。
 
 
―――はじめに、GL21プロジェクトがはじまったきっかけを教えてください。
 
焼き物は1300度ぐらいで焼くものですから、CO2を出しながら製品にしているんですね。市場で使っていただいて、こわれたり割れたり不要になったら、埋め立て地に埋めるしかなくて。埋めても千年たっても土にもどらない材料を使っているから環境に負荷をかけている産業や業種じゃないかと思います。そういう中で、業界として産業として、環境負荷を少しでも下げられるようなことをなんとかみつけて取り入れる必要がないかと考えたのが最初のきっかけです。
 
―――なるほどですね。
 
ただ、じゃあ陶器がすごく環境に悪いかというと、他の素材と同じ容積の器をつくるのに比較すると、CO2の排出量少なく同じ大きさが出来る、陶器がいちばんやさしいのです。でも現実にはどんどんCO2を排出している産業なのは変わりがないし、集まるたびに何かできないかという話になって、そんなときに研究者の長谷川善一さんに焼き物をリサイクルするということの考えを持ち込んでいただいて、埋め立地に処分せず、産地に回収させていただいて、それをもう一度、原料にもどせたなら、自然を破壊して持ってくる量を少しでも下げられるし、埋立地の延命にもなると考えて始めたんですね。
 
当時、食器を回収してつくられた食器くずを混ぜて土を作った場合と、新たに土をとってきたバージンの場合と、全体としてのCO2の排出量どっちが多いかというのももちろんみました。すると、ものすごく下がるわけじゃないけど、少なくとも増えはしない。運送で使ってしまう排気など、本当にリサイクルすることが環境に優しいの?という考え方もありますが、食器の場合は、埋立地の延命や自然半壊のことを含めれば、意味ある取り込みであるという確信を持ったのではじめました。
 
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▲1 回収された古食器 2 日本に1台しかない食器専用粉砕機 3 1ミリ以下の食器くずになるまで何度も同じ経路を繰り返し通り粉砕される 4 坏土に使われる最終形の食器くず
 
 
―――今日、粉砕の工場でみせて頂いた食器粉砕機、なんでも一緒くたに入っていましたが、素材ひとつひとつ磁器か陶器、材質が違いますよね。
 
そうですね。目開き1ミリの網を通過するまで磁器も陶器も混ざった状態で何度も粉砕していきます。粉砕したものを使うわけだけど、そのときどきで物性が違うようでは工業品として使えないので専門の大学の先生を呼んでテストし調査をしました。
 
 
―――それは回収物が磁器と銅器どれくらいの割合で入ってくるかということですか?
 
はい、そういうことももちろん考えなくてはいけないんです。主に一般に回収してきた場合に、磁器と陶器のバランスは磁器が多い場合約8:2。陶器が多いという状況でも最高でも磁器は約7:3くらい。磁器の中に、陶器が2割から3割まざってくる。それ以上にはまずならない。よっぽど特殊な状況でものが回収されればもちろん変わるけれど。
 
そんな中で、我々は回収したものを全部リサイクルしたいという前提で、物性のバランスがどういう風に出てくるか調査して、リサイクル率2割までであれば、回収したものの、ばらつきが全部吸収できるという考えを見つけたんですよ。なので最初のリサイクル食器用の土は、2割のリサイクル率と決めたんです。
 
 
―――それが食器くずを2割使っているRe20シリーズなんですね。
 
そうなんです。ところがね、いま世の中ってリサイクルするってことが結構当たり前じゃないですか。中には100%リサイクルとか、高いリサイクル率の数字が出ているなかで、何?2割だけなの?という反応が市場にはあるわけなんですよ。でもその2割にはものすご意味があるということをなかなか伝えきれないんです。
 
―――確かにどんなにすごいことか、正直お話を聞くまではわからなかったです。
 
先ほど、回収された古い食器を見ていましたよね。今作られている食器には一切ないですけれど、古い食器には、鉛とか、カドミウムが使われている絵の具があるんですよ。それを粉砕して中に入れて大丈夫なのかという部分について、すごく大きな壁がありました。それも色々なシーンを想定して調査し、何の問題もないというのを調べてもらっています。
 
 
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▲1 食器くずで作られた坏土 焼き物の自動形成機 従業員の3/2以上が絵付けや釉薬を担当する  作られた焼き物は、家庭や飲食店など私たちの日常に深く溶け込んでいく
 
 
―――改めてお聞きしたいのですが、美濃焼というのは業界的にはどんな産地なんでしょうか?
 
美濃というのは、スケールもあるし、製造技術も様々な技術を持っているし、需要にこたえて、生産できる地域です。たとえば100万円の抹茶碗も美濃焼もつくっているし、100円ショップの小皿も美濃焼だし、ヨーロッパの名作と言われるメーカーに負けないディナーセットも美濃焼なんです。そんな産地はどこにもないけど、ある意味、市場からみたときひとつに絞れないくらい多様な焼き物を作っているから、認知度は残念ながら少ない。
 
ヨーロッパには素晴らしい食器はいっぱいあって、親子三代にわたって使っているんですね。しかし、使われていても、その使い方はふだん使いじゃなくて、ホームパーティとか特別なお客様が来たときに食器棚からそれを出して使うんです。あとは大事にしまっておいて、生活ではふだん使いの食器を使っています。でも当たり前のようにふだん使いで使っている食器の品質ナンバーワンは日本なんです。それはヨーロッパでも、アメリカでも、イタリアでもなく。本当に朝、昼、晩、当たり前に使っているうつわ、うどん屋さんやスパゲティ屋さんでパッと出してくれるうつわの品質も世界一なんです。その世界一のふだん使いの食器をつくっているのは美濃の力。美濃の風土なんですね。

 

 

▲焼き物の大産地 美濃で使われる自動成形ラインの様子

―――日本で暮らす私たちはとても質の高い食器を使用できる環境で生活しているんですね。プロジェクトを進める上でなかなか乗り越えなくてはいけないことが多いと想像しますが、資源に恵まれ技術により品質までも提供できる美濃だからこそ、GL21プロジェクトをやろうと考えたのでしょうか?
 
環境負荷をかけないリサイクルをみんなで考えていて、工場からゼロミッションじゃなくて、市場から回収することまでやるべきだと思いました。環境のことをやらなくてはいけないと感じている人は意外と多いんじゃないですか。
だから、たくさんの製陶所や焼き物屋にこのリサイクル土を使って欲しい。でもメーカーは2種類以上の土を持ちたくないんです。みんなが1パーセントや2パーセントのリサイクル材量を入れるでもいいと思います。うつわは長く使えるもの。ものは大事にしなきゃいけない。みんなが当たり前にできればいいなと思います。
 
 
―――金津さんがプロジェクトに携わる原動力はなんですか?
 
業界のためにというよりも、自分の人生の中でこの仕事に携わっていて、その仕事が、やっぱり良かったと思いたいじゃないですか。ひょっとしたら自分のためかもしれないね。もっといい世界に移るというのもひとつの考え方だけど、いま自分が関わっている業界がもっと中身が濃くなれば、それに越したことはないですね。
 
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