神奈川県川崎市にあるヘラ絞りメーカー相和シボリ工業は、大浪忠さんが昭和57年に設立。
工業製品の部品製作や加工を業務としています。現在は、奥様と息子さんと3人で営んでいます。
ヘラ絞りとは、金型に金属の板を当て、回転させた板にヘラを押し当てながら金型に沿わせ少しずつ変形させ筒状を作っていく技術です。ヘラに伝わる感触を頼りに、加える力の加減が必要な為人の手によって加工される難易度の高い技術であり、昔ながらの加工技術です。
また、そのまま商品の形状となり、仕上がりを左右すると言われている金型の製作も自社内で行っています。

工業製品だけでなく、ヘラ絞りを活かして新たな事に取り組みたいという想いから、デザイナーの山崎義樹さんと共に、 ヘラ絞りでつくる生活道具のブランド『Onami』を立ち上げました。 

 

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丁寧な仕事と人との繋がりを大事に 
 
相和シボリを設立する前、大浪忠さんは東京の品川で5人共同でへら絞りメーカーを営んでいました。その内のお一人が辞める事になりそのきっかけで、昭和57年に独立を決意。独立して川崎へ
移りました。その頃は非常に不景気であり、それまで外に営業で回る事を一切した事がありませんでしたが、食べて行く為にもと大浪さんご夫婦お二人で外回りを始めました。インターネットの時代ではなく、手書きのはがきやチラシを作り、名刺と一緒にポストに投函していました。それをした事がきっかけで、お客様から注文が入るようになり、自信へと繋がって行きます。
独立してから現在まで続けてこれたのは、他の絞り屋では断られてしまう注文でも相和シボリ工業では、何でも受けられるように、何でも作って来たと言います。独立して一人で何でもやらざるを得ない環境だったという事もあり、様々なもの作って来た大波さん。大浪さんのこれまでの経験により、お客様の注文に柔軟に対応できる技術の蓄積があります。 
 
長いお得意様では30年。近隣からいらした飛び込みのお客様でしたが、「相和シボリ工業ではここまできれいに仕上げてくれるの?!」と喜ばれ、それから30年お付き合いが続いているそうです。仕事の依頼が入りお付き合いが始まると長くなることがほとんど。信頼や関係性などお客様との繋がりを大事にしている大波さん達は、図面の持ち込みがあった際には基本的にはお断りせず何でもお受けし、中には絞り屋の仕事じゃない物も。ご依頼や、物によって絞り以外の方法で製作した方がいいと判断した場合には、大浪さんから、より向いている方法のご提案をしています。  
 
この道50年の大浪忠さんに仕事をする上でのこだわりを聞いてみると、こだわりはあまり無い、こだわりを持たないようにしていると話してくださいました。いつも同じ形を作るわけではないへら絞りでは、何でも対応できるように、依頼があった形をどのように仕上げていくか、まずはそこから考えていくそうです。 
 
 
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家族だからできること
 
絞りの物は、形になっていればいいという風潮がありましたが、相和シボリ工業では美しく仕上げ届
ける事を常心がけています。奥様が手元に届くお客様の立ち場となり喜んでもらえるようにと厳しく品質を見ていきます。この完成度でいいだろうと仕上げた時にも、奥様から「これではまずいんじゃない?」とチェックが入ります。そう言ってくれる人がいるからこそ、更によりよい物が出来ていく。大浪さんも奥様がチェックしてもらう事を大事にしていました。 
 
家族でやっているからこそちょっとした一言で気分が悪くなったりする事も。思いやりを持って精神状態が安定できるようと奥様は、気を付けているそう。話しかけるタイミングは考えて、職人の二人に声をかけています。職人の大浪さん二人が仕事に没頭できるような環境づくりを奥様は心がけ、そして、思いやりが互いにあるからこそ、仲が良く、役割分担も言わずとも理解し合い効率よく仕事が進んでいきます。
 
 
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幼稚園の頃から相和シボリ工業の社長になると決めていた
 
2代目である大浪友和さん。
幼稚園の頃から「大きくなったら、相和シボリ工業の社長になる!」と決めていたそうです。
お父様でもあり職人でもある大波忠さんの背中を見て育ち、今ではこの道20年の職人に。
友和さんは、ご自身でいろいろな方法を普段から試して、よりよい品物が出来るようにと常に考えながらやっています。昔からのやり方を経験していく中で、もっとこうした方がいいのではないかと、いろいろな事をご自分の中で、常に考え試し続けています。工程を省くという事は、手を抜く事ではなく、余分に手をかけすぎると反対に品物自体を悪くしてしまう事も。試してみて上手くいけばそれが一番いい方法なので、これだったらこのやり方がいいのではないかという事を普段から考えながら、友和さんはものづくりをしています。 
 
 
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絞り屋がつくる生活道具のブランド『Onami』 
 
相和シボリ工業が立ち上げたブランド『Onami』のへら絞りの商品は、表面のヘラ目が特徴です。
ヘラ目というのは、製作過程で必ず付く跡の事です。通常ヘラ絞りの加工は、ヘラ目、いわゆる’跡’を残してはいけない事とされていました。あえてヘラ目を付ける事で、人の手が加わっている温かみを感じ、一つ一つ表情も違います。そしてOnamiのヘラ目は、跡を残しているのではなく、一度仕上げてからヘラ目を付けています。製作過程では、金型に沿っている金属板も変形途中になりますので、形を一度仕上げてから、更にひと手間加え模様としてヘラ目を付けています。
 
それまでのBtoBの工業製品で通用していた物が、一般のお客様、BtoCでは通用しない事がたくさんあり、それによりとてもいい作用が働いているそう。仕上げた商品は、使用するお客様の元へそのまま届きますので品質がより求められます。へら絞りでは、ステンレスをタンブラーのように深く深く絞る事は非常に難しいとされています。絞り屋でもここまで深く絞る事は難しく、傷が出やすい部分があったり、口が窄まってしまったりと形成までの難易度が非常に高いですが、そういったBtoC製品を作る事で、工業製品を作る際にも、指示が無くても見えないような部分でもきれいに仕上げる意識がより高まっているそうです。
 
 
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最後に奥様が、「結婚する人とは一緒に働ける人がいいってずっと思ってたから、夢が叶ったのよ」とお話してくださいました。大浪忠さんが独立した時からずっとそばにいた奥様。
2代目の友和さんがいるからこそ、今工業製品以外の生活道具にも挑戦が始められたそう。ヘラ絞りから生まれるこれからの品物が楽しみです。
 
 
相和シボリ工業
 
神奈川県川崎市のヘラ絞りメーカー「相和シボリ工業」は、デザイナー山崎義樹(BLOCKDESIGN)と共に、 ヘラ絞りでつくる生活道具のブランド『Onami』を立ち上げました。ヘラ絞りとは、雄型となる金型に金属の板をセットして、ロクロの様に回転させたその板にヘラを押し当てて、金型に沿わせる様に板を絞っていく、昔ながらの加工技術です。『Onami』の商品には、従来のヘラ絞りでは消されていた「ヘラ目」を敢えて残しています。そこには、ヘラ絞りならではの手の跡が残っています。http://aiwasibori.com/