自動車製造の中心地である愛知県豊田市。名古屋市に次いで県内2位の人口を誇り、トヨタ自動車の名で誰もが知るこの地は、市内の製造業で働く人の約85パーセントが自動車関連産業に従事する企業城下町。

そんなクルマの街から独自の研磨技術でお酒の味が変わるカクテルシェーカー、ドリンクタンブラーをご紹介します。次代を見据えた新しいものづくりについて、BIRDY.ブランドマネージャー、横山哲也さんにお話をうかがいました。

 

 

自動車部品メーカーから

カクテル用品が生まれたきっかけ

――はじめに、BIRDY.を手がける横山興業のこれまでについてをお聞きしてもよろしいですか。

当社の主力事業は自動車部品製造です。昭和26年に私の祖父が創業し、釘やトタン板などの建築資材を販売することから始まりました。ある時、借金の肩代わりにプレス機を手に入れ、それをきっかけに自動車部品を作り始め、トヨタの初代カローラの時代から本格的に工場で大量生産をし始めたと聞いています。

現在では、創業当時から続く建築資材の加工販売、そして自動車の座席シートに使われる金属部品の製造、この2つが事業の大きな柱となっています。

 

▲ 横山興業株式会社 BIRDY. ブランドマネージャーを務める横山哲也氏 

 

――BIRDY.が生まれたのはどんなきっかけだったのでしょうか 

私が入社したのが2011年で、ちょうど海外拠点のタイに工場をつくるタイミングでもあり、タイ赴任時の経験によってBtoC事業の必要性を強く感じました。

また、元々うちはBtoB事業をやっていましたが、完成品を作ってお客様に直接届けることをやれるのではないかと考えていました。それも理由のひとつです。

 

 

▲ 横山興業が製造する自動車座席のシートフレーム。ほかにアームレスト、フットレストなどを手がける。

 

タイでの価格競争により抱いた危機感から、

日本における雇用かつ自社ならではの製品を考える

――以前はどんなお仕事をされていらっしゃったのですか?

東京でウェブデザイナー職をしていました。うちはファミリー企業のため、海外拠点で何かあったときに親族で直ぐ対応できるということが1番の入社理由です。しかしながら生産管理の支援としてタイに行き、やはり価格競争に負けないものづくりを日本でしなければならないと思いました。

いま多くの人が日本のものづくりは世界に誇る技術があると感じていますが、私の感覚ですと世界に誇る技術はごく限られた本当に一部の会社しか持っていないと思います。当社もそうですが、ほとんどの会社は代替可能な技術しかないのではないでしょうか。

――それは何らかの体験から感じたのでしょうか?

日系企業というだけで優位性があるわけでなく、タイの現地企業と同列で扱われるシビアな環境です。彼らはラオスやミャンマーなどから出稼ぎ労働者を雇っているので、圧倒的な価格競争力があります。我々にとっては品質重視で比べてもらえれば良いのですが、価格での競争となった時に、どうしても日本企業は不利になってしまいます。また、技術が現地企業と比べて優れているかというと、うちの仕事に限って言えば技術部長クラスのベテランがタイ人に教えればできてしまうんです。もちろんすぐにはできないですが、時間をかけて1年2年教えれば可能です。

日本のものづくりだけが優れているのではなく、海外も別に遜色なくなってきています。安く大量にものを作ることもやっていかなくてはいけないのですが、それだけでなく独自製品も手がけなければと感じました。

 

 

日本のものづくり企業であれば、必ず世界で通用するわけでない

――「日本のものづくり」という言葉には違和感があるという訳ですね。

製造業には夫婦二人の町工場から何十万人の大企業まで多種多様な経営スタイルがあって、それを「日本のものづくり」とワンフレーズで表現しにくく感じます。海外で戦っていくには技術だけでなく、品質、価格、物流、ノウハウの現地化などあらゆる面で戦略と教育が必要だと考えます。

――海外進出当初から大きく戦略を変更した点はありますか?

タイに進出した当初は、タイの工場を日本の雇用の受け皿にと考えていました。しかし、価格競争力をつけるためにタイの現地スタッフを教育し権限を持たせ、日本人スタッフをいかに少なくするかという考え方に移行しました。日本からの援者を含め5人程度いた日本人スタッフを、現在では2名まで削減しました。そういったことから、日本「での」ものづくりを今後どうしていくかという事を強く意識するようになりました。

 

▲ 自動車事業を担う大見工場の一角にある商品企画室は、横山氏がタイから戻ったタイミングで立ち上げたそうだ。

 

――タイでのものづくりから学んだことはありますか?

「アライ・コ・ダイ」というタイの言葉があります。「何でも良い」とか「何とかなるさ」というニュアンスで用いる言葉ですが、そういった大らかな気質が仕事の進め方にも表れます。

例えば、100点満点でいうと20点くらいの仕事の報告を受ける事もありますが、次の時には180点くらいの大仕事をして補ってくれることもよくありました。大らかなマインドで彼らと向き合うこと、そして失敗しても良いのでまずはトライをすることが重要だと気づかされました。

BIRDY.の立ち上げにはそういったタイで学んだ「アライ・コ・ダイ」のマインドが活かされていると思います。 

横山興業 BIRDY.のものづくり【後編】のはこちら >>> 

横山興業株式会社

昭和26年7月、横山商店として愛知県豊田市若宮町にトタン板専門店を創業。以来、建築資材の製造販売、自動車用プレス部品、太陽光発電事業など幅広いニーズ対応する。ハイテン材(高張力鋼板)と呼ばれる硬くて曲げにくい素材のプレス加工を得意とし、軽量かつ高強度に仕上がる製造技術を提供している。新たに開発されたBIRDY. は0.1ミクロンレベルの精密研磨技術でつくられたカクテルシェーカーなどのバーウェアとテーブルウェア。これまでにない画期的な製品としてバーカルチャーやメディアを中心に注目を浴びる存在だ。http://birdy-j.com