職人インタビュー vol.6
藤井佐武郎( 宮島工芸製作所 )

ー杓子発祥の地で作られる純国産のプロダクトー

世界文化遺産である厳島神社で有名な広島県の宮島。その表参道商店街には、世界一の大杓子が展示されている。
その理由は、宮島が杓子発祥の地であるからだ。その始まりは1800年頃。神泉寺の誓真という僧が、弁財天の夢を見て、その美しい琵琶の形から杓子を思いつき、御山の神木から作ったそうだ。この神木の杓子で御飯を頂けば、ご神徳をこうむり、幸福を招くとの誓真上人の教えとともに広がっていった。今回取材した杓子の製造を行っている宮島工芸製作所の藤井さんが言うに、今では素材から仕上げまで一貫して国内で生産している作り手も減ったそうだ。

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ー職人の手作業で作られる杓子が減ってきているー

「うちはもともと大工をしていた聞いています。そして大工で培った技術を活用して、角盆を作っておりました。杓子を本格的に作り始めたのは、約50年前ですね。今も宮島の伝統的な技術を用いて、杓子を製作しています。原料となる木材は中国山地のものを中心に、素性のわかる国内の木材を使うようにしています。木材をひとつひとつ削り出し、手作業で杓子を形成しています」

 

一点一点職人の手で成形 仕上げは丁寧に確認しながら磨きます

 

ー純粋によりよいものを、適正価格で提供したいー

ー宮島は、杓子の他にお盆などのろくろ細工の生産地としても有名。つまり木を削る技術に長けた街なのである。数少ない杓子専任の製作所としてのこだわりとは?ー

「そんなたいそうなものはありませんよ(笑)。ただそれなりのものを作っていきたい。よりよいものを作りたいというのが第一です。変にこだわりすぎてコストが高くなっても、お客さまに負担になります。ただすぐにダメになるようなものは絶対に作りたくありません。特に計算しているわけではありませんが、日々使う物なので、機能性というのは重視しています。今までも何百という型を作ってきましたが、経験に基づいて握りやすさや、すくいやすさを試行錯誤した結果、今は30〜40型が残っています。うちの製品の特徴のひとつが、仕上げのコーティングをしていないこと。これにはメリットとデメリットがあることは我々も重々理解しています。ただ木目の美しさを活かせますし、使い込むことで風合いが増していきます。コーティングをしていないということは、木に水が染み込みやすいので、ご飯粒が過剰に付くこともなく、使い勝手がいいんですよ。ただ水を吸いやすいので、アフターケアが悪ければ、カビが出やすかったり、汚れがつきやすいというデメリットもあります。けっしてコーティングしているしゃもじを悪く言うつもりはありません。ただ私たちは、そのデメリットがあっても、それに替えられない魅力があると思っています」

 

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ー10年は使える、上質なしゃもじー

使い終わったら、よく自然乾燥させ、過剰に気を使わなくとも5年10年は問題なく使えるという。しかもプライスも1000円以下で提供されているものも多く、その作りを見れば、コストパフォーマンスの高さに驚くことだろう。今はご飯粒が付かないことを売りにしたプラスティック製のしゃもじもあるが、もともとご飯粒が少し付くことは自然なこと。その機能性は便利だが、こだわって炊いた白米を、木の香りがほのかに漂うしゃもじでよそう様式は、風情があって、格別なものであることは間違いない。

Text & Edit_Shuhei Sato

 
宮島工芸製作所
〒739-0588
広島県廿日市市宮島町617
 


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