花瓶やコップ、ペンダントライト。その先にあるものが透き通る、ガラスの小物。
いつものガラスでお気に入りをみつけたら、きっとその先とまわりの世界が変わって、暮らしに笑顔が生まれます。

帰宅後の癒しの明かり、気の置けない仲間との食事、花を飾るテーブル。いつもの場所をもっと好きになると、毎日がやさしく動き始めます。
そんな暮らしの空間がやすらぎの時間に変わる、ガラス作家に出会いました。

すっきりと清々しい空気に自然が織りなす草花や野鳥。飛騨高山の雄大な山谷の地で、作家の安土草多さんはガラスの道具を制作をしています。
安土さんのガラスは、飴玉のようなぽってりとしたフォルムとガラス肌が特徴。その優しいあたたかな存在感はどのように生まれるのか、安土さんのものづくりを伺います。

 

 

 

 

――いまガラス窯の温度は何度くらいまであがっているんですか?

温度は1200度に達していないくらいだと思います。昔からのアナログな窯なので計ってないかな。

 

 

 

 

 

――つくるスピードは、こんなにも速いんですね。

そうですね、僕は速いと言われますね。ひとつのアイテムをつくるのに最大で10分くらいの時間かな。ガラスは出来上がったら、徐冷炉に入れて一晩かけてゆっくり温度を下げて冷やします

つくっているときの状態で見るガラスの表情はいちばんきれいですよね。ガラス自体が熱を持って発光していますから、出来上がった時とはまた違います。冷えてもそのままの美しさを保ちたいなと。

 

 

 

――安土さんがガラス作家になったきっかけはなんですか?

大学のとき、サラリーマンになることは無理だなと思ったんです。それまではガラス触ったことなかったんですが。でもまあ、それからが大変。食えなくて・・・。

ガラスをやっている親父から最初に言われたんですよ。20年やっていれば、食えるようになるよって。20年くらい何か自分がつくりたいものをつくっていれば、食っていけるくらいはきっとお前のものを好きな人が日本全国にいるはずだから、と。

 

 

――そこから修行の時代がはじまったんですね

そうですね。昔は思うようにつくれない日にはあきらめて酒を飲んで寝たり、現状を受け止めたり、そういうことが必要でした。でも真剣につくり続けていると不思議なもので、失敗から新しいかたちが生まれて、こういうかたちを自分でつくれるんだなっていう発見があるんです。この温度帯だったら花瓶をつくればいいんだな、とか。

15、6年やってきましたけど、食っていけるようになったのは10年以上経ってからですかね。本当にガラスをやれると思ったのはここ1年くらいですよ。

 

 

 

――安土さんのかたちは微笑むような柔らかさを感じます。このかたちにいきつくまで、どんな積み重ねがあったんでしょうか?

職人を使った手作りのモノでも量産的な技法は個人ではやる必要がないと思うんですよね。ですから個人だからこそ選択し得る技法を選んでいるつもりです。人と違わないと僕が仕事をする意味がなくなってしまう。そんな風に考えて狭めていった結果、型吹きで肌合いを重視した仕事の仕方になり、このかたちが生まれました。

 

 

僕はひとりで仕事をしているので、きれいさっぱり一代で終えて、使い手や配り手と共に生きて共に形をつくっていき、そして最後は共に死ねればすごくいい、そんな風に考えているんです。ひとりでやっているからこそ、僕が他と同じ方法ではやってはいけないと思います。使ってくれる人や売ってくれる人とガラスで繋がるために。

人の仕事を選んだけれど臆病な性格なので、ひとりで仕事をする意味を見出さないとやれなかったのかもしれません。

 

 

 

――この表現は自分の仕事をつくるという意味も含まれているんですね。

個人の窯でガラスをきれいに溶かすというのはとても難しいことです。ですがきれいに溶かしたガラスだけが美しいかというとそうでもない。ガラスの溶かし方もそうですが技法や道具、ガラスを溶かす温度など僅かな選択の差の積み重ねが独自の表現につながると信じています。

 

 

――安土さんが制作する上でほかに意識していることは何ですか?

自分がダメだと思っていたものが逆にすごく受け入れられたりするので、失敗してもなるべく全部かたちにするようにしています。その中から生まれてきた形が他の作品に生かされることが多いので。

個人の環境で自分の判断だけでつくっていると狭い世界のものづくりになってしまう。何かいいと思われるものは、いいと思わせる形やニュアンスがあるんですよね。でも自分がそれについて客観的に理解できる範囲は狭いと思いますね。

 

――同じガラス作家であるお父様から受け継いだことはありますか?

小さな頃は吹きガラスをやるつもりはありませんでした。ですがずっと父が仕事をしている姿を近くで見ていました。仕事量的なものや仕事に向かう姿勢、未だに父に敵わないという思いがあります。そういった心の中の飢えは自分が現状に満足せず前に進んでいく上で非常にかけがえのないものです。

 

 

ガラス作家 安土草多

1979年生まれ。岐阜県飛騨高山を拠点に日々型吹きガラスを制作するガラス作家。ガラス肌に特徴を持ち、どこかホッとするようなあたたかみのある表情が魅力だ。

安土氏の作品は飛騨高山のやわい屋(https://yawaiya.amebaownd.com/)東京の中目黒SML(http://www.sm-l.jp/)にて常設している。