職人インタビュー vol.10

岩清水
久生 氏(空間鋳造)

 

盛岡とともに南部鉄器の産地として知られている岩手県・奥州水沢。水沢の歴史は、盛岡よりも古く、1088年に始まったとされています。もともと農具や生活道具を生産していた水沢では、「焼型」製法のほかに生産性を重視した「生型」と呼ばれる製法が取り入れられ、従来よりも効率的に生産が出来るようになりました。

その成形過程から生まれる鉄の質感にこだわり、現代の生活にすっと溶け込む美しい鉄瓶を生み出している空間鋳造。2003年にデザイナーから職人へ、家業で幼少期から肌で触れていた鉄鋳物の世界へ転身され、2009年に独立された代表の岩清水氏に話を伺いました。

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ーーデザイナーから職人へ転身されたきっかけを教えてください

もともと母方の家業が、盛岡で南部鉄瓶を製造しているのですが、最初はこの世界に入るつもりはなかったんです。東京でデザイナーとして働いていたのですが、縁があって南部鉄器の仕事をする機会がありました。そこからまた鉄に触れるようになって改めてやってみたいと思うようになり、盛岡に戻ってデザインや工場を経験した後、5年前に独立をして水沢に拠点を構えました。

 

ーー岩清水さんの作品は、一目見た時に”鉄らしい”という印象を受けました。素材や技法についてのこだわりはありますか?

水沢では1000年もの鋳物の歴史があるんです。そのなかで私も鉄の持つ自然な質感を表現したいと思い、「焼き肌磨き」という技法を考えました。鋳込んだ鉄を極限まで磨き、更に熱して表面を焼きつけました。そうすると表面に凹凸が出来るんです。そこから生まれる鉄の質感は、ひとつひとつ表情が異なり、鉄が自然素材だということを感じて頂けると思います。ちなみに、地球って3分の1が鉄で出来ているんですよね。(笑) 実は地球が誕生した頃からある素材なんですよ。それから、朽ちた鉄は錆に変わり、やがて土へ還る。地球が誕生した頃からある素材で、鉄は錆びたらまた土へ還る。そういうところも魅力的だと思います。

 

 

ーー鋳物は赤く溶けた鉄を流し込みますが、鋳型は砂でつくられているんですよね?さらさらの砂に溶けた鉄を流し込むというのは想像がつきません…

南部鉄器の鋳型には、焼型と生型という2種類の技法があります。うちでは水沢で多く作られている「生型」という砂を固めて鋳型を作る技法を取り入れています。生型は、細かい模様を手彫りでつける焼型に比べて、生産性を重視した技法で、工業的という意見もあるのですが、僕は生型も伝統的な技法だと思います。崩れやすい砂で型を作るには、熟練の技が必要なので、職人が手作業で行っています。生産性が高いからといって、イメージで価格を下げるのは違うと思うんですね、そこにもっと誇りを持っていいと思うんです。

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ーー誇りというお話が上がりましたが、普段お仕事をされる上で気をつけていることはありますか?

僕は常に、工房のメンバーには誇りを持つように伝えています。

THE ROOTS of NANBU CAST IRONWARE with PRIDE」南部鉄器の伝統に誇りを持って日々の作業に取り組んでいれば、世代が違っても皆同じ方向に向かって進むことが出来ると思います。うちには70代のベテランから30代の若手まで様々な年代の職人がいますが、しっかりとチームワークが取れていますよ。

 

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ーー最後に、鉄瓶の魅力について教えてください

お客様には鉄瓶を購入されてから、数ヶ月から半年ほど使い込まれて初めて、その鉄瓶は道具として100%の完成品になるんだよとお伝えしています。鉄瓶はカルシウムやマグネシウムを吸収してくれるので、毎日使うことで湯アカがつき、内側がコーティングされていきます。やがて使い込まれた鉄瓶は、例えば2,3日水を入れっぱなしでも錆びなくなるんですよ。ぜひ鉄瓶の湯が沸くまでのゆっくりとした時間、沸き上がってきたときの音の変化をぜひ楽しんで欲しいと思います。

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そう言いながら、最後に鉄瓶で沸かしたお湯でお茶をごちそうしてくれました。そのお茶は、透き通った味でのどの奥にすっと染みわたるようでした。

鉄瓶というと、錆や手入れを気にする方も多くいるかと思いますが、コツさえ覚えれば、従来使用していたものと、さほど変わりなく使用することができます。

毎朝、鉄瓶で沸かしたお湯でコーヒーやお茶を淹れるー。そのひとときは、きっと最高の時間を約束してくれます。

  

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岩清水 久生/Hisao Iwashimizu

空間鋳造/代表

 

岩手県奥洲市水沢区を本拠地に鉄の創作活動。

各地にて個展多数開催。

(社)日本クラフトデザイン協会正会員。

 1964年 岩手県盛岡市生まれ。1989年よりデザイナーを経て1992年に鋳物の世界へと転身。2009年に独立、「空間鋳造」を立ち上げる。

多くの展示会に出展するほか、2000年には優れたデザインを集めたセレクトショップ「ニューヨーク近代美術館 MOMA SHOP」(アメリカ・ニューヨーク)に選定され、2003年には日本クラフト展にて優秀賞受賞、2004年には工芸都市高岡2004クラフトコンペにてグランプリを受賞するなど、多数の受賞歴を誇る。

 

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空間鋳造
岩手県奥州市水沢区羽田町字堀ノ内33