Interview with a leading creator vol.1
Seijo Kawaguchi / Creative Director & Art Director (TUGBOAT)
トップクリエイター・インタビュー vol.1
タグボート 川口清勝(クリエイティブディレクター/アートディレクター)
 
 
interview & text by lefthands
 
日本各地に、連綿と受け継がれるものづくりの伝統。それを広く全国に、さらには世界に向けて発信しているREALJAPANPROJECTの活動には、著名人たちからも多くの賛同の声が寄せられています。
これから、世界を舞台に活躍する第一線のクリエイターをお招きして、日本のものづくりをテーマにお話しをうかがうこのコーナー。最初のゲストは、広告やオンラインメディアの制作で知られるクリエイティブエージェンシー〈タグボート〉の川口清勝さんです。
 
――クリエイティブの仕事に取り組むとき、日本人であるということを意識されるものなのでしょうか?
 
川口:自分らしい表現を心掛けてはいますが、普段は特に日本人ということを意識していないですね。でも、日本のコンテンツは世界に通じるだろうということは絶えず意識していますし、もっと世界に進出していけるだろうと思っています。アウトプットがインターナショナルなのかローカルなのかは、そのコンテンツやモノ次第ですね。商品の能力が、グローバリゼーションという世界の波の上に立てるとなったときには、そこの表現を意識していくと思います。
 
――日本のタグボートのクリエイティブは、世界と同じ舞台でも通じるものになっているということですね?
 
川口:タグボートは通常の広告代理店とは違い、メディアビジネスを中心としていませんので、クリエイティブコンテンツを日本で展開しようが他国で展開しようが自由なんです。その商品が中国に向いていれば、中国でもやれると思うし、ヨーロッパでも通じるなら、ヨーロッパでも同じだと思います。タグボートの10周年を記念して出版した『TUGBOAT 10 Years』という本も、その表現が海外でどう受け入れられるのかを考えて、日英のバイリンガルにして、アメリカやヨーロッパにもでも展開してます。例えば、ある北欧のファッションブランドが自国で大成功したとすると、今度は日本の市場も視野に入れて、クリエイティブにおけるメディア展開や、ビジネス戦略を考えるわけじゃないですか。でも日本では、そういうことはまだ、あまり自由に考える人は少数派です。
 
――言葉の問題もあるからでしょうか?
 
川口:言葉の問題もあるし、あとは文化の問題もあります。やはり日本の企業は、いまだに目が日本に向いているのだと思います。
 
――まだ保守的だと?
 
川口:そうですね。 為替やマンパワーの問題など、海外進出にはリスクがあるじゃないですか。まずお金がかかるし、ライセンスにした場合は、海外に工場をつくらなきゃいけないという問題もあるので、なかなか行きづらいのではないでしょうか?映画のような、どこでつくってもフィルムというフォーマットは同じで、言語は翻訳すればいいだけといったオープンな市場は、他にはめったにないわけです。映画文化は、もう世界中に染み付いているでしょう? つくったものを劇場で公開して、お金を集めるっていう構造が世界中で浸透している。すなわち映画という商品は、グローバルなアビリティを持っているということができる。他にもポスター、OOH広告、新聞広告なども、翻訳すればどこへでも持っていける。日本人も、そういうことをもう少し意識すれば、海外に行きやすいんじゃないかなと思います。自分も含めてですが。例えばキヤノンやトヨタなど、完全にグローバルになっている企業は、世界にも焦点をあてて成功している企業ですよね。実際アメリカでは、それらが日本の企業だと知らないで買っている人だって、大勢いると思います。
 
――なるほど。クリエイティブ云々の以前に、もの自体の魅力が大事とおっしゃっていましたけれども、では今の時代にアピールするものの魅力とは何でしょう?
 
川口:世間で注目を集めて、お金を出して買われているものには、何か感覚的に人を魅了する要素があると思います。だから、言語以前に、もの自体のクリエイティビティのようなものが本質としてある。さらには、木でできているものとか、土に還るものとか、リサイクル可能でサステイナブルなものを誰もが選び始めている。そこも大事なポイントと考えてます。
 
――今、食も含めて、世界的に日本の文化が改めて注目されていますよね。例えば日本のプロダクツの魅力は、どんなところにあると思いますか?
 
川口:日本の伝統工芸の魅力は、形がきれいで、肌に優しくフィットして、そばに置いておくと気持ちがいいということ。天然素材でつくられているものが多いからでしょうが、今の時代らしい一番の魅力は、リサイクル率が高いことだと思うんです。つまりは、地球に負荷を与えないものなんですね。特にアメリカは、プラスチック文化の上に成り立っているように思えます。同じ型で大量に生産するから安い。それで、壊れるとまたつくって買うから、その繰り返しで地球環境的にはいかがなものか。一方で、瀬戸物は土から生まれたものなので、壊れてそのままの形で残っても、自然破壊にはならないですよね。それにセラミック農法で、細かく砕いたものを土と混ぜて通気性をよくするために使うなど、色んなことができるのですが、その差が一番大きいんじゃないかと思いますね。
 
――たしかに日本の工芸品は、燃やせるか、砕いて土に戻せるものばかりですよね?
 
川口:人間がつくり出した便利なものって、たくさんあるじゃないですか。それらが最終的にどうなるのか、そろそろみんな考えて買い始めている。日本の伝統工芸には、そういった22世紀的な、素晴らしい考え方が初めからあるのだと思います。地球にとっていいことは、人間にとってもいい。使い勝手や価格の部分で、多少目をつぶってあげたとしても、そういういいものを選ぼうというセンスが、これから先につながっていくための大事なキーワードなんじゃないかと思います。買うときは、長く愛せるものかどうかで判断してもらえるといいなと思います。長い目で見て、存在しないほうが幸せというものは、決してつくるべきじゃないですよね。 
 
――品質と価格のバランスは、消費者にとっては大切な尺度になりますよね?
 
川口:そうですね。伝統工芸は高度成長期の大量生産の構造以前から存在しているものなので、現代生活に合っていないものも増えてしまっているはずなんですよ。だから、ちょっと無理しても買いたいとか、次の世代に手渡したいとか、そう思える商品を時代に合わせて開発していくことが大事なんじゃないかなと思います。
 
――川口さんといえば、九州の海童という芋焼酎を、広告のクリエイティブの力によって、万人の目に触れるものにしていますよね?
 
川口:海童という焼酎には、伝統工芸と相通じるものがあって、昔のつくり方を上手に現代バージョンにしています。もちろん工場は近代化していますけど。例えば、芋焼酎は芋のほかに米麹を使っているのですが、世間に出回っている多くの芋焼酎の場合は、米麹の原料を外米に頼っているんです。でも、誰も外国の米なんかは食べないから、何に使うかというと米麹なんですね。つまり、味噌や醤油や焼酎や日本酒に、莫大な量の外米の米麹が使われているわけなんですよ。外米が悪いワケではないのですが、どんな生来の外米が使われているのか、我々には把握しづらい。それをよしとしない濵田酒造さんは、鹿児島産の芋しか使っていないし、お米も国産のもので、つまり原料の100%が国産なんですね。そこまでのこだわりがあるからこそ、大量輸入した安価なものと競争して負けて欲しくないんです。さらには、そういうこだわりの気持ちや心意気を受け継ぐことが大事なのではないかなと思います。
 
――最後に、クリエイティブのできることは何なのか、ということをお話し願えればと思います。
 
川口:いかに効率よく、多くの人に「良きコト」を伝えるかっていうのが本来のクリエイティブです。そのためには、こういう動線をつくるとか、こういう営業をかけるとか、トラフィックを増やそうとか、そういうことを考えることが大切だと思います。もっと、”あなたにとっていいこと”というメッセージを伝えていくべきだと思いますね。 そういったことを意識して世界中が連携していくと、マーケットがどんどん活性化するだろうと思います。日本食も、世界の市場が、ワールドワイドに目を向け始めたことで、他国の料理と並べられるようになって、その質の高さが認められました。日本には他にも、世界の同じ土俵に出ていないものがたくさんあって、これからもっと、プロモーションしてあげる必要がある。それをできるのがクリエイティブであり、我々にとって一番大事なことだろうなと思います。日本発世界発信、応援しています!
 
――ありがとうございました。
 
 
Seijo Kawaguchi
川口清勝
1962年生まれ。多摩美術大学デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。85年株式会社電通入社。クリエーティブ局アートディレクターを経て99年クリエイティブ・エージェンシー「TUGBOAT」を設立。東京ADC会員。NY ADC会員。LONDON D&AD会員。NY ONECLUB会員。ポータルサイト「magabon」(http://www.magabon.jp/)編集長。2008年、多摩美術大学グラフィックデザイン学科客員教授。主な受賞に東京ADCグランプリ、朝日広告賞、カンヌ国際広告賞 Silver、THE ONE SHOW DESIGN GOLD、NY FESTIVAL Silver/Bronze、LONDON INTERNATIONAL ADVERTISING AWARDSNY ADC Merit など。