暮らしの小さな世界にこだわりを持つ方が増えています。
毎日過ごす空間だから、ずっと気持ち良く、たまに誰かを呼んでのんびり楽しめるように。そして身近なところに好きをみつけると家の中が好きになり、毎日がご機嫌に過ごせます。
 
「少し新しい日用品」と聞いて、まず何を思い浮かびますか?
ヤマサキデザインワークス山崎宏さんのデザインコンセプトは「少し新しい日用品」。少しというのは、いま目の前にある道具の当たり前になっている部分を、もう少し先へ、もっと追究してみたらどうなるのかということ。
 
どうしても生活感が出すぎてしまうティッシュの箱。トイレで「ぎくっ」とならないために、できればクールに置きたいトイレットペーパー。古いけど便利な昔からの道具。
 
山崎さんの製品は、毎日の空間がみるみるうちに気持ちの良い空間に変わる、さりげなくて力強いものばかり。プロダクトデザイナー山崎宏さんはどんなものづくりの姿勢でどのようにモノを生み出すのかお話を聞きました。
 
 
 
 
六甲山をイメージした
ヤマサキデザインワークスのロゴ
 
 
――まずはじめにヤマサキデザインワークスのロゴはどんな意味があるんですか?
 
屋根のように見えるロゴマークは、家紋で使われる「山形紋」をアレンジしたもので「六つ並び山形」と勝手に呼んでいます。これは、私が神戸の六甲山麓で生まれ育ったからなんです。
神戸は坂の街で、坂の上が北、坂の下が南。遊び場は山だったし、山に行けばアケビや山菜が採れて、沢蟹もアマゴも捕れた。少年時代はそんな自然の中で育っていました。
 
 
――山崎さんがデザイナーになったきっかけはなんですか?
 
デザイナーになった経緯は、中学から高校に進学するときに、勉強だと普通。絵を描くのは、まだいいほうかなって感じでした。ちょうど数年前に隣町の明石の高校が美術科を新設したんですね。それでその学校に通うことになりました。そこでは基本的な美術全般のデッサン、水彩画、油彩画、彫塑とか、いろいろしました。その中にグラフィックデザインの授業もあって、アートを仕事にするイメージが湧かなくて、デザインの方が向いているかなあと。その後、専門学校ではプロダクトデザインに出会い、やってみたら向いていたなあと思います。
  
 
ヘラブナ釣りと青春18きっぷが好き。
時刻表を知らない世代は、勿体ないと思う。
 
 
―デザイナーを志す当時は、どんなものが好きだったんですか?
 
当時の趣味は釣りで、主に鮒やヘラブナを釣っていましたね。食べたりしないし派手なアクションもない。複雑な要素が少なくて、竿と糸と針と浮。同じ場所で、釣れるまで待っているように見えて実は攻めていて、待っている人は釣れないんですよ。水面から餌までの深さを変えたりとか、餌の種類を変えたりとか、チューニングするんです。水面下の戦いで今の釣り方が合っているか、ひとつひとつチェックしていく感じです。
あとは鉄道好きの友達がいて、よく出かけましたね。自分でプランを組み立てる時刻表は今も好きです。どのルートで行くのか、夕方の時間帯にどこを通りたいのか、時刻表によって旅をイメージすることができるんですよね。想像を掻き立てるモノなんです。インターネットですぐ、乗換案内が出てくる時代ですが、便利だけど、楽しくはない。時刻表が分かると、もっと旅が楽しめると思います。
 
 
文具メーカーでの商品開発時代から、
ヤマサキデザインワークス設立まで
 
――山崎さんは20代に、文具メーカーへ入社されましたが、メーカー時代はどんな仕事をしていらっしゃったのですか?
 
会社では当時、デザイン部門という組織がなく、商品開発というくくりで商品ごとに担当がありました。見積り、納品、請求という業務から、企画書をつくったり、生産工場や生産ライン、原価とロット、金型の償却、検品方法から品質試験まで、営業を除く商品にまつわること全般を経験していました。
その一つに、特許や意匠などの知的財産の出願依頼や、それをチェックする仕事もあるんですね。自分で担当した商品や次に出す商品が他社権利を侵害していないかチェックしたり。基本的には弁理士さんにお願いするんですけど、弁理士は制度には詳しいけど商品には詳しくないから一緒に仕事をするんですね。そのときに、彼らが使っている言語などをおざなりにしないで学ぶことで、ここの文言を変えたら、権利の穴が一個埋まるなとか、それも能力のストックのひとつになりました。そのときには「ヤマサキデザインワークス」という、プチメーカーをつくる予定ではなかったけど、今でも役に立っています。知識や経験、貯金などストックをつくっておくことが、次の可能性につながると思っています。
 
 
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――それから独立されて「ヤマサキデザインワークス」を設立。プロダクトデザイナーとして働くいまの環境、仕事範囲はどんな感じなんでしょうか?
 
私が運営しているヤマサキデザインワークスは、工場こそ持っていませんが企画とデザインをして、生産管理や営業、出荷までをやっています。分かりやすく一言でいうとプチメーカーです。アパレルの世界では珍しくないと思いますが、プロダクトでもやりようはあると感じています。
 
――自分の分岐点となった商品はありますか?
 
元々は、デザインワークのプレゼンというつもりで始めたのですが、徐々に比率が逆転していった感じで、特にコレという分岐点はないように思います。
 
 
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▲きれいに整理された山崎さんのデスク。もらった名刺の管理については10年近く研究中だそう。「手に収まりやすく、見つけやすい数はトランプの量かも。」と話す山崎さん。
 
 
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▲左奥にそびえ立つの収納BOXは、山崎さんがデザインした「TOTONOE」。対角で赤とグレーに色分けされていて、好みで使い分け、シールを貼れば分別もひと目で分かる。
 
 
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▲蓋付きの一体型でフラットな設計。目立ち過ぎず、部屋の個性を邪魔しないプレーンなデザイン。
 
――生活道具を中心につくっている山崎さんは、お話をうかがっている印象はとてもナチュラルな雰囲気を受けますが、デザインはどこかエッジが効いているというか主張の強さを伺えます。デザインの視点はどこからはじまりますか?
 
例えばセンヌキだったら、単純に家でいろんな人が来て食事したりお酒飲むことがあるんです。そのときに栓をいっぱい開けることがあるんですね。そうすると、王冠を片付けたくなるんですけど、席をやっぱり立ちたくないんですよ。会話の途中で、この栓だけで立つのも嫌だし。それで、栓が入ったらいいな、とかね。
言われてみればそうなんだけど、という事をみんな何となく、流しているんですよね。それを流さないというのが私のやり方ですね。トイレットペーパーのストックどうしようということも流さない。
 
 
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▲漆の焼き付け仕上げが美しい山形鋳物のボトルオープナー。ビールを開けたあとの王冠を収納できる。
 
 
 
アプローチの仕方は生活者目線。
そのままにしてもいいことを、あきらめない
 
――山崎さんがつくる居心地を良くするようなデザインは、21世紀ならではの上質なもののカタチなのかもしれないですね。
 
私はみんなが思っているほど潔癖症ではないんです。わりとざっくりしています。取り組んでいるものもテーマとして気になってから着手するまでが長いし、着手してからリリースするまでも長いんですよ。トイレットペッパートレイも3年くらいの末に着手しました。
生活の中になんか気になるなあっていうのが常にいくつもあります。デザインの起点になっていく、気になるストックというのがあるんですね。ある意味、日常でのストレスが高いかもしれません。それぞれのストレスの原因がどこなのか知りたいですよね。
 
 
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YAMASAKI DESIGN WORKS 山崎宏
 
1970年、神戸生まれ。兵庫県立明石高校美術科卒業後、大阪市立デザイン教育研究所でプロダクトデザインを学び、1991年にコクヨ株式会社入社。10年程勤務した後、独立し2005年にヤマサキデザインワークスを設立。
ヤマサキデザインワークスは、プロダクトデザイナー山崎宏の手により、少し新しい日用品を提案している。これはこういうモノ。そう思って無意識にあきらめている事をあきらめなかったら、どうなるのか。ステーショナリー、テーブルウェア、インテリア小物など、生活の身近なところから発信している。既成概念に捉われない素材の取り入れ方や、暮らしの悩みを解決する商品づくりが特徴。日本のものづくり産地についての知識も深く、オリジナルブランドの運営をする一方、企業や産地の商品開発にも携わる。http://www.ymsk-design.com/