Interview with a leading creator vol.4
Yusuke Iseya/REBIRTH PROJECT
 
トップクリエイター・インタビュー vol.4
伊勢谷友介(リバースプロジェクト代表)
 
 
photo_Jun Miyashita  text_Kayo Yabushita  edit__lefthands
 
日本各地に、連綿と受け継がれるものづくりの伝統。それを広く全国に、さらには世界に向けて発信しているREALJAPANPROJECTの活動には、著名人たちからも多くの賛同の声が寄せられています。世界を舞台に活躍する第一線のクリエイターをお招きして、日本のものづくりをテーマにお話しをうかがうこのコーナー。第4回目のゲストは、無駄なものを価値あるものへと、文字通り”再生”する、リバースプロジェクト代表の伊勢谷友介さんです。
 
――「リバースプロジェクト」の理念に、とても共感しました。
 
伊勢谷: 僕がこのプロジェクトを思いついたのは、27歳の時。その年に、初監督作品の『カクト』が公開されたんですね。 映画は、虚構の中で理想を伝えて、多くの人とシェアできるメディアだと思うんですが、それと同時に現実社会の中でもリアル に何かを伝えていきたいなと思ったんですね。それが「リバースプロジェクト」なんです。理念の真ん中にあるのは「人類が地球 に生き残っていくために何ができるか?」ということ。今までの 社会が失敗してきた過去、積み上げてきた歴史を見直して、これからの人間のあるべき姿というのを考えないといけないなと思っ たんです。人間が生きていくのにかかせない「衣」「食」「住」 にまつわる問題点をアートの力を使ってクリアしながら、新たな価値を生み出す。そんなことをコンセプトに、企業や個人などと コラボレーションしながら、デザインやプロデュース活動をしています。
 
――”株式会社”として、取り組まれているんですね?
 
伊勢谷: そうなんです。プロジェクトごとに、必要な人間が集まって、利益を分配するスタイルです。資本主義社会の中で成立させていかないといけませんから、それが持続可能なビジネスの在り方だと思っています。生き残っていくこと=金を儲けるっていう意識はもう僕らにはなくて、そういった新しい価値観の次にどこに価値を置くかということをもっぱら考えています。お金はあくまで道具ですから、僕らみたいな意識を持った人たちが、利益をきちんとまわりに分配していけば、資本主義はうまく回るはずなんです。そういう経営者としての理念も、すごく大事なんじゃないかと思っています。
 
――「映画」と「リバースプロジェクト」という2つの表現方法は、伊勢谷さんにとって、それぞれどういう意味を持っているのでしょうか?
 
伊勢谷: 映画にしろ、会社にしろ、それぞれプレッシャーも刺激もまったく違うんですね。役者をやる時は、それに”乗っかる”だけですが、監督業の時は、映画のすべての世界観を、たとえば空気のあるなしまで僕が決められるわけで。リバースプロジェクトでは、現実として、リアルな世界にどう落とし込んでいくかを考える。そのバランスが、頭の中をいい具合に刺激してくれるっていうのがありますね。仕事において絶対的に大事なのが、「想像力」なんですよ。想像力を失った人が経営をしてしまうと、きっと何か問題が起きてしまう。僕はそういう意味では、想像もしつつ、理想を考えながら、できない理由も含めて現実の中できちんと成立させていくことができる。そうやって映画とリバースプロジェクトを通して行き来できることは、ある種の視点を持ついいきっかけになっていると思います。
 
――いま手がけられているプロジェクトについて、具体的に教えてください。
 
伊勢谷: 「RICE475」は、「おいしいお米」というものの正当な価値を見直す、お米のリプロデュースです。無農薬のものと減農薬のものを販売しているんですが、やっぱり無農薬ばかりが売れるんですね。事実、その方が人間にとっていいのは間違いないですから。でも、無農薬でお米を育てるって、それこそ、虫をひとつひとつ手でつぶしていくくらい大変で。オーガニックで、手植えでとなると生産量はごく少量で、ある一部の人にしか流通しないものになってしまいます。でも、多少なりとも”道具”を使うことによって効率を上げて、いろんな人たちが食べられるだけの量をつくることも大事なんじゃないかと。そういった無農薬の”理想と現実”を知ってもらうこと。そして、消費者のニーズに合わせてお米のつくり方そのものを考え直して、きちんとビジネスとして成立させること。それが僕らの仕事です。今年はワークショップも開催します。手植えを体験してもらって、大変さを知ってもらいたいんです。泥が気持ちいいっていうのは、一瞬のことですからね。
 
――「衣」のプロジェクトも、ユニークなものがありますね?
 
伊勢谷: 「ガラ紡」という、短くて使いものにならない「落ち綿」を、昔ながらの手法で織った布があって。すごく手触りもよくて、ラフな織り目がいい風合いなんですよ。タオルなどの小物をプロデュースしていたんですが、今年は「JOHN LAWRENCE SULLIVAN」のデザイナーの柳川荒士さんと一緒に、スリーピースのスーツをつくっています。素材はかき集めたものでも、きちんとした技術と、デザイナーの力によって、クオリティの高いものをつくるっていうことが、いまの時代のクリエイティブとしてかっこいいんじゃないかなって思っています。5月に伊勢丹のショップで発売になるので、お楽しみに。
あとは、「Lee BIRTH PROJECT」ですね。大量生産の裏でどうしても出てしまう不良在庫は、今までアウトレット行きになるか、廃棄処分されてきたわけなんですが、その「余りもの」に、クリエイターの力を+αすることで、ものの価値を高めようと。「Lee」の代表である細川さんはすごく理解のある方で、そういったネガティブな事実を一緒に解決していきましょうと言ってくれて。デッドストックのデニムに、レーザーでデザイン加工しています。今年はレディースも充実していて、ショートパンツとスカートも出す予定です。
 
――これらの企業、個人や団体とのコラボというのは、どういうきっかけで生まれたのですか?
 
伊勢谷: 「こういう素材がある」だとか、「こういうものが大量に余っている」ということを教えていただくことが多いですね。ある学校が廃校になるという話を聞いて、そこの机や椅子などを使って作品をつくったりもしました。
「Lee BIRTH PROJECT」は、実はただのダジャレから始まったんですよ。「Lee(リー)と、REBIRTH(リバース)で、Lee BIRTH(リ–バース)でいいんじゃない?」って(笑)。その勢いでLeeに飛び込み営業に行ったんですよ。飲んでた時のアイデアだったものが、実際に細川さんと意気投合して、トントン拍子に話が進んだって感じですね。いまとなっては、僕らにとっても大事なプロジェクトです。
 
――ありそうでなかった”再生”のスタイルですよね。目のつけどころがユニークというか。
 
伊勢谷: 今年、僕が一番期待しているのが、「エアバッグバッグ」です。車のエアバッグでバッグをつくったり、シートベルトでベルトをつくるっていう。廃車になった車は、95%以上という高い割合で再利用されているんですね。でもその中で、エアバッグとシートベルトだけが、ゴミなんです。しかも、エアバッグは大概が使われないまま、つまり新品なわけです。そりゃ、使われない方がいいんですが、新品なのにゴミ。それを使ってみようと。バッグブランドの「master-piece」さんと一緒にやっています。ざっくりとした素材感もおもしろいし、なぜかパステル調のカラーリングで統一されていたり、縫い目のラインの色もいいんですよ。
 
――そうした埋もれていたものに光を当てるという意味で、「リバースプロジエクト」と「リアルジャパンプロジェクト」には、共通する部分があるように思います。
 
伊勢谷: 日本の伝統工芸は、長い歴史を経て研ぎすまされてきた技術だとか、精神性も含めて、とてもリスペクトしています。伝統を受け継いで、それを後世にも伝えていくのは、今まで職人さんや工芸家がやってきたことで。でも、それがいま行き詰まってしまっている現状がありますよね。刀鍛冶の人だって、刀が売れない時に火鉢の箸をつくって、刀鍛冶職人が火箸職人になることで、時代と共に変わっていったわけです。時代の流れには乗らなければならないし、今までもそうやって淘汰されてきた技術っていっぱいあると思うんですよ。だから、ただ単に「残していくべきだ」と守ることだけが大事じゃないような気がします。
 
――今まで受け継がれてきたものとは、また別の次元で何か考えることが必要なのかもしれませんね?
 
伊勢谷: 僕たちにできるのは、新たな価値を見出すこと。クリエイターがもっと想像力を持って、次の時代にも残せるような形や工程を、デザインする必要があると思います。だからいまクリエイターにとって、すごくおもしろい時代だと思うんですよ。デザインって、限定された環境の中で、どう暴れられるかが、すごく大事なクリエイションなので、そこをもっと楽しむ人間がいっぱい出てきてくれたらいいなと思いますね。もともとあるすばらしい技術を、次のスタンダードにしていく、そういったクリエイションを提案する強いクリエイターが、僕はかっこいいなと思いますね。
 
――伊勢谷さん自身が、まさにそれを体現されていると思います。
 
伊勢谷: 必死でバタバタやっています(笑)。リバースプロジェクトの目標って、「個の成長」なんです。人間が次の次元に行く こと。たとえば、地球の目線で人間を見ると、だんだんと人口を増やしていって覆い尽くそうとしていて、いまの環境がないと僕らは生きていけないのに、それを自ら潰そうとしている。「それってバカだろ」って思いますよね?その目線が必要なんです。まず事実を「受け入れる」ってこと。知って受け入れて、嘆いて立ち止まるんじゃなくて、次に進むために考えて、クリエイトしていくこと。そうすることで、次にやることが見えてくるはずで、それがいまの僕たちに課せられている命題なんだと思います。
 
――ありがとうございました。
 
 
Yusuke Iseya
伊勢谷友介 
1976年、東京都生まれ。東京藝術大学美術学部 修士課程修了。大学在学中の1998年に『ワンダフルライフ』でデビュー。以後、映画、ドラマなどで幅広く活躍。2002年には第一回監督作品『カクト』を公開。2008年からは「REBIRTH PROJECT」をスタートし、代表を務める。本年には、第二回監督作品『セイジ 陸の魚』が全国公開予定。主演 西島秀俊、森山未來。