Interview with a leading creator vol.7
Ryo Yamazaki/Community Designer
 
トップクリエイター・インタビュー vol.7
studio-L  山崎 亮(コミュニティデザイナー)
 
Text&Edit_Nao Omori
 
日本各地に連綿と受け継がれるモノづくりの伝統と技術。REAL JAPAN PROJECTでは、それを日本のみならず世界へ向けて発信するべくさまざまな活動を行っています。ここでは、日本には国内はもとより、世界を舞台に第一線で活躍をされているクリエイターの方々をお招きし、ご自身の活動や日本のものづくりについてインタビュー。第7回目のゲストは、”人がつながる仕組みをつくる”というコミュニティデザイナーとして活動し、地方活性化のため多岐に渡るプロジェクトを展開しているstudio-L代表、山崎亮さんです。
 
――大学ではランドスケープデザインを学ばれたとのことですが、デザインを志したきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
 
デザインを志したきっかけ……、あまりポジティブではないんですが、大学は農学部に進んだんですね。その理由は、小中学生のころ「これからの時代は英語とコンピュータとバイオテクノロジーが重要になるから、このどれかを学んでおきなさい!」と、親や学校の先生に、やたらと言われていたんです。たぶん、そういう時代だったんでしょうね。それで、中学に入ったら英語の授業があったので気合を入れて学んでみたのですが、ぜんぜん面白くなくて、分からなかったんですよね。それで「英語はないな」と(笑)。あとはコンピュータとバイオ。当時はWindows95がまだ出ていなくて、真っ黒い画面に白い文字をカタカタ打つというものだったんですけど、それを友達がやっているのをみて、「これもないな」って思ったんです。なんだかむずかしい、と(笑)。そしたらもう、残されたものはバイオしかないので、バイオをやろうと思って学部を調べてみたら、農学部だったんですよ。それで、大阪府立大学の農業工学科を受けたんですね。農業と工学の両方できる感じがする、これはちょっと面白そうだな、と思ってね。でも入ってみて気付いたのは、農業工学科の中にバイオはなかったんです(笑)。バイオは農業化学の方にしかなくて、学科を間違えて受験しているんですね。さすが高校生、だめじゃんオレ、みたいな(笑)。
 
――すべて入学されてから気付かれた、と……。
 
そう、入ってみて気が付いたんです(笑)農業工学だから、トラクターの開発とか、農地をどう耕したら一番効率よく作物ができるのかという土地の造成学とかね、そんなコースしかないんです。これはまずいなぁと思っていたら、6つあるコースの中に緑地計画工学というのがあって、その研究室の壁には図面とかおしゃれな公園の絵とかが貼ってあってね、ここが一番いいかもしれないなと思って、緑地計画工学の研究室に入ることにしたんです。そこでランドスケープデザインを学びました。この研究室は、いわゆるデザインだけではなくてプランニングも学ぶという、両方やるのが特徴だったんですね。緑地計画というのは、都市の中にどう緑地を置いていくかというものなんですが、通常は街全体の緑の計画をつくるところで終わるんです。でも、うちの研究室は計画をした緑地の中までちゃんとデザインをする。3年生、4年生と研究室で学び、その後オーストラリアのメルボルン工科大学に留学をして1年間デザインの部分を専門的に学び、帰ってきました。
 
――デザインにはもともとご興味をおもちだったんですか。
 
ファッションのデザインとか、そういうのには興味があったんです。美しいものやかっこいいものは、潜在的に好きだったんでしょうね。しかし自分でも仕事にできるかというのはよく分からなかったんですけど、帰国して、もう少しデザインを学びたかったので大学院に2年間通い、修了したあと、ランドスケープデザインを行っている建築設計事務所に就職をしました。
 
――”コミュニティデザイン”に興味をもつようになったきっかけは、1995年の阪神・淡路大震災での経験が大きく影響されていると著書(『コミュニティデザイン 人がつながるしくみをつくる』学芸出版社刊)でも拝見しましたが、どのような時にその想いが強くなったのでしょうか。
 
建築設計事務所に勤めていましたから、ワークショップなどで住民の方たちの気持ちをつなげてチームしていくことを学び、一方で建築や公園の設計をしたりと、ソフトな面とハードな面、両方を体験していたんです。その時に震災を経験して、ハードだった部分はすべて壊れてしまった。それでも、人のつながりでようやく生きていける、こんな極限状態でも残っているのは人のつながりなんだ、という状態を目の当たりにした際、”人と人とのつながりをデザインする人”って、必要なんじゃないかな、と思い始めたんですね。モノのカタチをデザインするだけでは、震災があったときに対応できないことが多いな、と。よく考えてみるとこれは震災に限ったことではなくて、孤独死や自殺によって毎年数万人の方たちが亡くなっている。もしかしたら、実は人とのつながりがあったら、少しは気持ちが楽になったかもしれない。これはやはり、モノのカタチをつくったから人がつながれるという問題でもなさそうなので、”つながりをデザインする”仕事をしていきたいと、思うようになりました。
 
――いわゆる”モノ”をつくらないデザイナー、”コミュニティデザイナー”とはどのようなお仕事なのか、改めて教えてください。
 
ある種の人の集まり、コミュニティをつくるお手伝い、地域の人たちが抱えている課題を乗り越えていくお手伝いをする、というのが僕らの仕事です。ですから、その対象はいろんな場所があるんですよ。出発点となったのは、有馬富士公園(※1)。作ったはいいけど使われていない、さみしくなってしまった公園というのは全国にあるので、みんなに愛されて使い倒されるような公園にしたいな、という想いからスタートしました。そこで、周りの人たちがたくさん押し寄せて、毎日日替わりでさまざまなプログラムを開催してくれる公園をつくっていく。これを公園のハードの設計でなくて、どうしたら毎日人が来てくれる状態をつくれるのか、という仕組みの部分を最初に行いました。市民参加型で公園を楽しい場所にしていく、というプロジェクトです。また、それを公園だけでなく、例えばデパートが撤退してしまったあと(マルヤガーデンズ/※2)を商業で埋め尽くすのではなく、コミュニティの人たちに日替わりでプログラムを実施してもらうプロジェクトも行いました。行政の計画を住民と話し合い、住民の気持ちを反映した計画を完成させ、なおかつその計画を住民のチームが進めてしまうという状態をつくるなど、住民自身が地域の問題を解決していくためのサポートを行っています。コミュニティデザイナーとまちづくりコンサルタントってどう違うんですか、聞かれることがあるのですが、コミュニティをデザインするということは、まちづくりも含めて、企業、自治体、デパート、商店街など、ある種の人の集まりを勇気づけたり、活動しやすい状況を生み出していくことにつながれば、全部コミュニティデザインなんだと思います。大学の学科もひとつのコミュニティですね。今は学科運営にも携わっています。
 
――プロジェクトを行う際、まず最初に地域の方々へのヒアリングをされるそうですが、いつも一組ずつ行われるそうですね。その理由はどのようなものなのでしょうか。
 
個人的な想いをきっちり引き出したい、というのがあります。大人数で行ってしまうと、遠慮して話せなかったり、建前で話してしまったりしますので。まずはどんな活動をしているのか、その活動の中で困ったことはないかなど、一人ずつ1時間から2時間くらいかけて話を伺います。また、もうひとつの狙いは”友達”になってしまう、とうことなんですね。あとで、「あの時あんな話をしましたよねー」ということを言い合える仲になりたいんです。地域で50人くらいキーマンになる人たちと友達になることができれば、ワークショップを開催した際、友達になった人と「どうもお久しぶりです」と話をしていると、ほかの人たちは「あいつはよそ者じゃないのか」って感じてくれる。話を聞く耳を持ってくれる。ですから僕らがワークショップを開催すると、皆さんきちんと話を聞いてくれるんですが、これはなんの魔法でもなくて、会場に何人かの友達がいるというだけなんです。
 
――とはいえ、さまざまな方がいらっしゃると思いますし、アクの強い方などもいらっしゃると思うのですが、”友達”になるためのコツなどはありますか。
 
相手の言うことを否定しない、ということでしょうね。どんな話がでてきたとしても、”Yes,and”と相手の意見を肯定し話を積み重ねていきます。逆に「いや、そうじゃなくて」という話し方をすると、否定された感じがして話をしたくなくなってしまうんです。人間同士の良好な関係をつくろうとするときには、相手の意見を否定したり、正論で返すということは得策ではなくて、その人が言いたいことはどんな気持ちから出てきているんだろうと、何回も何回も引き出そうとする、それが必要なんだと思いますね。
 
――山崎さんのご活動を拝見していると、”人と人とのつながり”の重要性が強く認識されます。しかしながら、いま都市部を中心にご近所や地域における人間関係が希薄になっているような状況が多く見受けられます。「誰かとつながりたい」と思う人にとって、まずできることとは、どのようなものがあるのでしょうか。
 
小さなサークルをつくることでしょうね。自分が好きなことで興味をもった人たちで集まること、町内会、近所の友人、会社、学校の人たちと一緒にサークルをつくってもいいし、mixiとかfecebookの中にコミュニティをつくってもいいと思うんです。まず人とつながるには、その人たち自身が楽しいな、興味があるなと感じてくれるプラットフォームをつくる必要がある。それは具体的な場というよりは、”みんながそこに参加したい”と思うテーマですね。かつてコミュニティと呼ばれるものは、ほとんどが地縁型のことを意味していました。いまはこの地縁型のコミュニティが希薄になっていて、あるテーマに特化して人が集まってくるという状態になっています。ですから、「誰かとつながろう」と思うのなら、魅力的なテーマを掲げ、これを一緒にやりたい人を募集していくことからスタートしていくといいかもしれません。僕の知り合いでお茶が好きな女性がいて、この方が同じくお茶が好きな友達と、二人で月に一度カフェで「お茶を飲む会」を開いていたんです。そのうち茶葉やお菓子、ポットなどをもちよって、公園でこのお茶会をするようになったそうなんですね。屋外でお茶会を開いていると、散歩をしている人やジョギングをしている人など、いろんな人から声をかけられるようになる。「もしよかったらどうぞ」といっているうちに、いまでは約100名の名簿をもっているようで、お茶会開催の連絡をすると、毎回20人くらいの人が集まるそうなんです。お茶とちょっとつまめるものなどを持参するのがルールなので、みんなでお菓子自慢などをしているそうなんですけど、これはみていてとても楽しそうですね。
 
――栃木県益子町で開催される土祭を一過性のお祭りとして終わらせず、その後のまちづくりにつなげられたプロジェクト(※3)を行っていらっしゃいましたが、いま地場産業の衰退や後継者不足に悩む地方自治体が増えています。そのような現状に対し、山崎さんから何かアドバイスをお聞かせください。
 
自分たち以外の人が関わる”のりしろ”みたいなものをつくっていくことが、大事だと思っています。例えば器をつくっている会社があるとして、社長を含めた社員全員で「器を使ってできること」を考えてみる。会社で行える業務内容も、採算も度外視して、自由に発想してみるんですね。自分たちの会社ができることはここしかないけれど、社員みんなの夢としてはこんなこともあんなこともやってみたいな、ということがどんどん広がっていくんです。そうすると、いまのメンバーではできないことの方が多くなっているんですよ。僕は”穴だらけの大風呂敷”と呼ぶんですけど、その穴を誰に埋めてもらえばいいだろうかということを考えればいいわけなんです。このとき、他の人たちが関わる”のりしろ”が生まれてくる。地域の人や都市部から参加してくれる人たちを呼び寄せて、「一緒に考えていこうよ」って、課題を開いた方がいいような気がします。実はこういうのって、商工会がすごく得意なはずなんです。商工会には、さまざまな得意技をもった人がたくさんいますから。互いに協力し合う関係性を築いていくことができたら、その人たちが関わる”のりしろ”も多く出てきますしね。商工会内部で閉じてしまうのではなくて、いろんな人たちに携わってもらいながら、その地域を盛り上げていくことができたらいいんじゃないかと思います。
 
――山崎さんのご出身地である愛知県では瀬戸物、studio-Lのある大阪では錫器など、日本には優れた伝統工芸品が数多く存在しています。何かご興味のある日本の工芸品などはございますか。
 
1年くらい前から急にお茶が気になるようになりまして。というのも、知り合いの建築家と神戸の中華街を訪れた際、中国茶のお店で高価なお茶を購入したんですね。どうやら高いお茶のほうが、ほんの少し茶葉を入れるだけで何回も濃い味を楽しめるというんです。逆に安価な茶葉だと、一度淹れたらすぐに味が出なくなってしまうという。そこで中国茶や緑茶、ほうじ茶などを購入してみたら、確かに高価な茶葉の方が凝縮された味を出してくれて、すごく美味しいんです。そうすると、その茶葉をきちんと密閉してくれるような缶が必要になってくる。何かいいのが欲しいなと思うようになって、京都の開化堂さんの茶筒を購入したんです。胴やブリキなど、さまざまな素材のものがあるんですけど、中ブタもしっかりついていて、空気も全然入らない。茶筒とか茶さじとか、こういうのには魅かれますね。お茶は特にほうじ茶が好きで、加賀棒茶がお気に入りなんです。とてもきれいな香りがして、大好きですね。
 
――最後に、今後、山崎さんが取り組んでいきたいお仕事についてお聞かせください。
 
行政の職員の意識や内部決済の仕組み、人事評価システムを変えていかなければならない気はしています。21世紀になって、住民やコミュニティの人たちのやる気はものすごく高まっていますので、住民参加型時代に応じた進め方というのにシフトしていく必要があると思いますね。実は内部評価の仕組みも、20世紀と同じままなんです。分かりやすくいうと、余計なことをしなかった人が出世するんですよ。何か新しい取り組みを行って、成功したとしても彼らのポイントアップにはならない。むしろ失敗したらポイントがダウンするんですけど、成功してもプロジェクトに取り組まなかった人と同じなんです。そんな評価システムの中で、あえて危ない橋は渡らないですよね。内部評価と外部評価が一致して、その人の評価へつながるような仕組みになっていったら、住民と一緒にプロジェクトを行うことも彼らの出世への一歩になりますから。ですから、この行政側のモチベーションを高める仕組みをどうつくっていくか、それと連動し、決裁や評価のシステムをどうかえていくのか、このあたりを取り組んでいかなければいけないなと考えています。
 
――ありがとうございました。
 
 
※1/有馬富士公園プロジェクト(1999年‐2007年)
兵庫県三田市にある県立公園で、日本で初めて市民参画によるパークマネジメントを実践。NPOなどの市民が「キャスト」となり、一般来園者「ゲスト」に対しプログラムを提供する仕組みを取り入れている。プログラムの数は年間約100から730にまで増加し、来場者数も年々増え続けている。
 
※2/マルヤガーデンズ(2010年‐)
鹿児島県鹿児島市にある商業施設。地上9階地下1階の10層からなるフロアには、約80の店舗が入り、各フロアに「ガーデン」と呼ばれるオープンスペースを設置。地域のコミュニティ(NPO法人や民間団体など)が活動できる場を提供し、月に約200ものプログラムを実施している。
 
※3/土祭‐ヒジサイ‐(2009年)
栃木県益子町で開催される土祭を、その後のまちづくりにつなげていったプロジェクト。益子の土をテーマに、16日間に渡って20あまりのプログラムを展開。参加したボランティアメンバーが集まり「ヒジノワ」を立ち上げ、展示会やコミュニティカフェの運営など、地域と商店街に開いた活動を行っている。
 
 
【プロフィール】
山崎亮
Ryo Yamazaki
 
1973年愛知県生まれ。studio-L代表。京都造形芸術大学教授。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザインなどに関するプロジェクトが多い。「海土町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」「震災+design」でグッドデザイン賞、「こどものシアワセをカタチにする」でキッズデザイン賞、「ホヅプロ工房」でSDレビュー、「いえしまプロジェクト」でオーライ!ニッポン大賞審査委員会長を受賞。著書に『コミュニティデザイン ひとがつながるしくみをつくる』(学芸出版社刊)など。
 
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