Interview with a leading creator vol.16
Masato Kawai /Interior stylist
トップクリエイター・インタビューvol.16
川合将人(インテリアスタイリスト)

text_Shoko Yamasho(lefthands) edit_Shigekazu Ohno(lefthands) photo_Jun Miyashita
今回のゲストは、インテリア・スタイリストとして活躍する川合将人さん。有名家具ブランドの展示や海外ブランドの取材なども手がける川合さんは、世界のプロダクト・デザインの最先端を知るからこそ、日本のものづくりのクオリティの高さに可能性を見出しています。
 
 

ー川合さんが最近手掛けているお仕事について、教えていただけますか?

「雑誌で毎号のお仕事をやらせていただいているのが、『BRUTUS』と『Casa BRUTUS』です。この2誌ではインテリアの紹介と、特集などでインテリアのスタイリング・ビジュアルづくりをさせて頂いています。デザイナーさんにインタビューをしたり、原稿を書いたりもします。雑誌以外で多いのは、展示会の会場構成。例えば去年のデザイナーズ・ウィークで、イタリア・マジス社がロナン&エルワン・ブルレックというデザイナーの展示を行ったのですが、その会場構成を手掛けました。それと、最近増えてきたのは住宅メーカーさんの仕事です。旭化成ホームズさんの仕事では、青山の展示場に建つ2棟のインテリア・コーディネートを手掛けました。また、同社から発売中の「STEP BOX」という住宅では、設計の方たちと一緒に、商品の開発から携わりました。住んでいる家族のプロファイルをつくって、『こんな家族が住んでいるんだとしたら、こういうインテリアになるよね』と、インテリアをしつらえていく仕事をやりました。あたかも実際にに暮らしているかのような雰囲気をつくり上げるために、家電から食材まで、本当に微細なところまでこだわって買い揃えましたね」

ー家1軒分、丸ごとのコーディネートですか! すごいですね。

「買い物が苦しくなるくらい、買い物しました(笑)。棚ひとつから、どういう用途で使うものかを決定して、それに合った小物を揃えていくんです。全国の営業の方たちが、その住宅の特徴を学んで各地の展示場でお客様に説明したりするためのプロトタイプなので、なかなか責任重大でした」

ー川合さんは世界の最先端のインテリアやデザインの情報に触れていらっしゃいますが、日本の伝統的なものづくりは、世界でどう評価されているのでしょうか?
 
「今、”和”とか”和洋折衷”的なものに、流行の潮流が来ていると感じます。近年カッシーナから、シャルロット・ペリアンの家具が復刻されていますね。ペリアンの家具って、桂離宮の違い棚からインスピレーションを得てデザインされていたり、ペリアン自身は柳宗理と交流があったりなど、和的な要素を含むのが特長です。それで、改めて和洋折衷で使われている日本の伝統技術がないか探してみたときに、海外一流ブランドショップの壁紙に使われている歴清社という金箔の会社に出会ったんです。普通の金箔だと、貼るのに職人さんの技術が必要で、お金も施工日数もかかるものなんですが、歴清社は壁紙の状態に仕上げて商品にしているので、現場での施工スピードと手間賃をカットできるんです。また壁紙の状態なので、海外にも発送しやすい。例えば梁の部分だけ貼るなどすれば、デザインのアクセントにもなります。すごくモダンで素敵ですよ」
 
ーなるほど。日本の伝統的技術がインテリア・デザインの最先端で注目されてもいる、ということですね?
 
「そうですね。最近、デザイナーさんと組んで地場産業を活性化させていくという試みは、いろんなところに派生して各地方に広がっていますよね。例えば富山だったら、桐山登士樹さんがチームに入って、メーカーとデザイナーさんをつないでいくという試みをされていたりとか。キャノンのIXYシリーズをデザインしているプロダクトデザイナーの清水久和さんが、KANAYAというメーカーで鋳物のスツールをつくられていて、それがとても面白かったんです。パステル調の色合いで、一見プラスティック製品に思えるんですけれど、持とうとしたらすごく重たい(笑)。見た目の印象と持った時の印象が、すごく違うんです。またクオリティが高いので、安っぽいものに見えないんですよね。結局、ものの価値はクオリティの高さでしかないと僕は思っています。プロダクトの仕上げの詰め具合は、他の国より圧倒的にレベルが高いですね、日本は」
 
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ーそのクオリティを支えているのが、職人技ということですね?
 
「職人さんの腕と、それをコントロールするデザイナーさん。その協力があって、初めて魅力的なものができるんだと思います。例えば、京都・アウラコレクションのデザインを手がけたエンツォ・マーリさん。彼は職人の工房に行って、置いてある機械を見ただけで、どれだけのクオリティのものをつくれるかを即時に見抜けたといいます。職人さんに対して、『もっとできる、このクオリティまでできる』と教えてあげて、コントロールするのがデザイナーさんの役目。もちろん、デザイナーさんの要求に応えられる我慢強さと根気、細かいことを仕上げる技術があってこそ、いいものがつくれるわけで。日本には、まだまだいい環境があると思います」

ーエンツォ・マーリさん以外にも、そういうデザイナーはいらっしゃいますか?
「はい。僕は元々、デザインおたくだったので(笑)。実はイタリアの建築家、エットレ・ソットサスがとある案件で石材を使う機会があったとき、頼んでいた業者では間に合わなくて困っていたのです。そこで期日に合わせて完璧な仕事をこなしたのが鈴木大理石東京という会社でした。この仕事ぶりを見たソットサスはその会社の社長さんを”ミラクル鈴木”と呼ぶくらい感動したそうです。石のどの部分を使ったらどういうものができるか、という卓越した見識と技術があって、『この納期では絶対できないだろう』とソットサスが思っていた仕事も、見事やり遂げたんですね。それ以降、ソットサスの石を使うプロジェクトに関しては鈴木さんに声がかかるようになり交流はずっと続けられていました。」
 
 
ーミラクル鈴木。そこまでの信頼を勝ち得るとは、素晴らしいですね。 
 
「『テラッツオ』という、ソットサスの事務所が出していた雑誌があるんですけれど、その中の1冊に『Wall』というのがあるんですね。それは鈴木さんのために出版したものでもあったのです。ソットサスは写真も撮るので、いろいろな地域の壁を撮影した写真を編集したんです。鈴木さんのためにその1冊をつくったことは、ちゃんと本にも書かれているんですよ」
 
 
ー伺っていると、ソットサスにも実は日本の技術が入っていたりとか、ペリアンも日本がインスピレーションの源だったりと、非常に興味深い事実があるのですね? 
 
「そうですね。例えば有機ELでも、同じようなことが起こっているんですよ。有機ELのパネルをつくる内部の機械というのは、実は日本のメーカーが手掛けてもいるのです。だからオランダや中国のメーカーで製造されているパネルも、実は日本の技術で成り立っているんですね。でも残念ながら知られていない。商品は、海外の会社のものとしてPRされますから」
 
 
ー川合さんが心を惹かれるプロダクトとは、どのようなものなのでしょう? 
 
「クオリティが高いもの。そこしかないと思います。例えば椅子であれば、座って構造的に無理があるなとか、つくり方が気になってしまう性質で。どういう組み方をしているのか、じっくり見たりします。家で使っていてすごくいいなと思っているのは、”箱馬”です。カッシーナから復刻になった、ル・コルビュジエの箱馬なんですが、もともとは南仏カップ・マルタンの休暇小屋用につくられたものなので、多用途に使えて、使い方の制限がない。スツールにもなるし、テーブルにもなるし。実は組み方がすごいんですよ、本当にただの木の箱なんですけれど、どの面に圧がかかっても大丈夫なように、頑丈につくられています。カップマルタンの別荘は狭小建築の名作として知られていますがかなり狭い。ウチはもっとすごく狭いので、それはガンガン使っていますね。サイズ違いで2個あるうちの1個の上には炊飯器を置いています(笑)」
 
 
ー世界を知る川合さんだからこそお伺いしたいのですが、日本の技術や製品、ものづくりの精神を世界に発信していくにはどうしたらいいと思われますか?
 
「今イタリアで”セーニョ・イタリアーノ”も同じようなことをされていますよね。老舗の職人さんたちがつくる伝統的なものに、現代的な視点を入れて、魅力的なものづくりをしています。つまり、新しいデザインや考え方、編集する立場の人たちが関わることが大事になってきていると思うんです。著名な方たちがデザインすることで、メディアの注目も集まりますし。それと同時に、そういった現代的な視点を持つ人達が、昔からあるものの価値を新たに発見することも大事だと思います。昔からつくられているものでも、わざわざ新しくデザインされたものよりも、ずっといいものがあったりします。すでにこんなにいいものがあるよ、ということを見つけて、世に再び提案するお手伝いができたらいいですね」
 
 

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プロフィール
 
川合将人(かわいまさと)
 
 都内のインテリアショップ勤務を経て独立。
マガジンハウスの「BRUTUS」と「Casa BRUTUS」での仕事を皮切りに数々の雑誌でインテリアスタイリスト兼ライターとしてキャリアを積み独自のスタイルを確立。
住宅メーカーのモデルルームの内装コーディネートやインテリアショップのカタログ、広告などでスタイリング業務を行い、2010年からは恵比寿のデザインギャラリー、SOMEWHEREを拠点に活動を開始。内装設計のコンサルティング業務や、家具や照明ブランドの展示イベントで会場構成を務めるなど空間演出の仕事も多数展開している。また、デザイン家具への豊富な知識を生かして各メディアで執筆活動を行っている。
 


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