Interview with a leading creator vol.17
Kaichiro Yamada/Designer
トップクリエイター・インタビューvol.17
デザイナー 山田佳一朗

 

日本の伝統技術を駆使し、現代の感性で新しいプロダクトを作る

インテリアのデザインからメーカーのブランディング、グラフィックまで幅広く活躍しているカイチデザインの山田氏。自身が手掛けた数々のプロダクトで、グッドデザイン賞を受賞するなど、日本有数のクリエーターと言っても過言ではないだろう。また日本の伝統工芸の技術をうまく駆使し、現代の感性で新たなプロダクトを作るスペシャリストでもある。デザイナーだけに止まらず、花の販売を行う『花の停留所』や子供と未来の暮らしを考える『コド・モノ・コト』プロジェクトなどを手掛けるマルチクリエーターだ。

 

 

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日々の生活で「こんなのがあればいいな」と思うこと

「基本的には、日々の生活でこんなのがあればいいなと思う時からスタートすることが多いです。例えばコトリシューホーン。これも当初から小鳥が靴箱に止まっているようなデザインにしようとは思ってもいませんでした。ある日、玄関の床に靴ベラが落ちていて、これはなんとかできないかという疑問から始まったんです。どうしたら床に置かれないだろう?よし靴箱に引っかける形にしよう。だったら素材は何がいいだろう?丸みがあって、強度と暖かみのある成形合板にしようなんてことを、自分でサンプルを作りながら、ああでもないこうでもないと考えて、徐々に完成に近づいていきます。自分でサンプルを作りますので、突拍子もないデザインではなく、生産する際の効率や技術も、ある程度考慮しながら、デザインを組み立てます。目的、意匠、空間との調和、構造。これは常に意識していますね。靴ベラは、日々使うものですから、使いやすさも必要だし、簡単に壊れない強度も必要となる。そして自分の最大の目的が、靴ベラを床に置かないということですから、靴箱に掛けることが楽しくなるデザインというのが欠かせませんでした」

山田氏は、デザイナーであり、作り手でもある。ただの机上の空論で終わらず、作り手からの視点も大切にしたデザインを提案できるからこそ、ここまで絶大な支持を得ているのだろう。職人さんを擁するメーカーとの仕事ぶりも、実に熱心だ。

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職人さんのことを理解するために、工場を何度も訪問
 
「一度仕事が決まったら、職人さんのことを理解するために、工場を何度も訪問していろいろと話をさせてもらいます。大して面識もない上に、素材や技術について理解をしていない関係で、ああでもない、こうでもないと言うのは、ちょっと違うと思うんです。

例えば、秋田県・角館伝四郎の輪筒 茶筒。ここは伝統工芸品の樺細工のメーカーですが、あえて樺を全面に使わないプロダクトを提案しました。1851年に創業した老舗で、代々受け継いできた素晴らしい技術を持っています。それは、実際に職人さんに会って、この目で見て、改めてものすごいものだと感動しました。そこで樺を全面に使っていなくても、樺細工の素晴らしい技術で、その良さを活かした新しい物が作れるのでないかと考えました。その伝統的な技術を駆使しながら、くるみ、さくら、かえでを使うことでモダンな趣に仕上がりました。樺細工なのに樺以外の素材を使うことは、抵抗があったと思いますが、そんな無茶に思えるリクエストにも応えてくれて、本当に感謝しています。結果的に、現代の生活と伝統的な技術が調和したプロダクトになったのではないでしょうか。」

 
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 作り手だからこそわかる感覚や、その技術を理解した上での新たな提案。そして少し内向きな職人の胸に飛び込んでいける人間力。山田氏の魅力は、斬新なデザイン力だけでなく、作り手や消費者などのことを考えられる思いやりこそ、最大の魅力なのかもしれない。
 
 
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プロフィール
 
山田佳一朗(やまだ かいちろう)
 

1997年武蔵野美術大学を卒業後、同研究室助手を経て2004年よりKAICHIDESIGNを主宰。
考える人、作る人、 伝える人、使う人と共に考え、関わる人が生き活きと生活できるよう
活動をしている。 主なプロダクトにKOTORI(アッシュコンセプト)、
酒器だるま(セラミック・ジャパン)、輪筒(角館 伝四郎)、クモノス(かみの工作所)、
インテリアにコワーキングラウンジEDITORY(神保町)など。グッドデザイン賞、red dot design award等受賞。