Interview with a leading creator vol.2
Masamichi Katayama/ Interior Designer(Wonderwall)
トップクリエイター・インタビュー vol.2
ワンダーウォール 片山正通(インテリアデザイナー)
 
 
 
text_Kayo Yabushita  edit_lefthands
 
日本各地に、連綿と受け継がれるものづくりの伝統。それを広く全国に、さらには世界に向けて発信しているREALJAPANPROJECTの活動には、著名人たちからも多くの賛同の声が寄せられています。世界を舞台に活躍する第一線のクリエイターをお招きして、日本のものづくりをテーマにお話しをうかがうこのコーナー。
第2回目のゲストは、話題となる多くのプロジェクトに名を連ね、いまや日本だけでなく、世界中が注目する人気インテリアデザイナー、ワンダーウォール代表の片山正通さんです。
 
 
――まず、いま手掛けられているという、青森のプロジェクトについて教えていただけますか?
 
片山:JR東日本さんとの取り組みなんですが、今年の12月の東北新幹線全線開業に合わせて、青森駅のすぐ近くにファクトリーとマーケットの複合施設をつくっています。青森の特産品であるりんごを使ってシードルをつくる工房と、地元のテナントを入れて、野菜やお菓子など、青森にまつわるいろいろなものを取り揃えた市場を併設する予定です。ロゴや、パッケージデザインはグルーヴィジョンズが担当していて、我々は施設全体のデザイン監修をしています。
 
――”青山”ではなく”青森”。意外な場所で驚きました。
 
片山:そうですよね。どちらかというと、今まで東京・青山、パリ、ニューヨークといった場所で仕事をしてきましたから。場所は変われど、仕事は一緒なので、楽しんでいます。話を聞いて行くと、地方ごとに特色あるカルチャーがあるのに、ちゃんとアピールできていないわけです。「青森」という場所のポテンシャルを引き上げて、青森の人たち、そして観光客のための施設と聞いて、最初は自身、「青森?」と驚いたのと同時に、「やってみたいな」と思ったんですよね。しかし、青森だからどうだということではなくて、東京にあってもいいものをつくりましょうと提案しました。それがあることで、地元の人に自慢してもらえるような、そんな施設になるといいなと思って、新鮮な気持ちで取り組んでいます。
 
――このREALJAPANPROJECTもそうですし、その青森のプロジェクトもそうですが、いま改めて日本文化や地方が見直されている中で、片山さん自身はどれくらい「日本」を意識してやられているんでしょうか?
 
片山:僕はずっと逆説的に、日本や日本人であることを意識しないようにしてきたんです。海外で仕事をしてみたくて、海外の出版社から本を出したり、あえて日本人であることをアピールせずにきたんですね。しかし、海外でいくつかプロジェクトを手掛けたときに、すごく”日本的”だって言われて、びっくりしたんですよ。ずっと欧米のデザインに憧れてやってきたんだけれど、「これは日本的なディテールだ」とか「こんなところまでこだわるのはすごい」とか、細かい部分までちゃんと見てくれて、それを評価してくれた。いわゆる、見た目にわかるようなジャパンデザインとかじゃなく、もっと広い意味で、細かいところも含めた日本的なものが僕に染み付いていて、それが強みなんだとわかったんです。クライアントはそれこそ重箱の隅をつつくようなことを言ってきます。そういう事に対して、さらに我々はもっと細かいところにまでこだわってやっている。そういうことをどこであろうと、とことんやろうと思ってからですね、日本というものを意識し始めたのは。日本ってすごいんだなって。僕を見てる人を通してはじめて、気がついたというか。
 
――なるほど。海外に出たことで、自分を客観視できたと。
 
片山:そうですね。ここ2006年に初めてユニクロさんからグローバル旗艦店の最初の店となるNY ソーホーのお話をいただいたとき、佐藤可士和さんと話したのは「いつもやってることやろうよ」ということだったんです。「僕らがかっこいいって思うものをストレートにつくって、日本からきましたって、ちゃんと言おうよ」って。強みである商品のバリエーションや商品量をカタログ的にきちっと見せる――そうやっていつも通りにやることが、インパクトになるんじゃないかと思ったんですね。で、ふたをあけてみたら、意外とこういうカタログ的なお店がニューヨークにはなかった。僕の中では、日本的なイメージでデザインしたつもりはないんだけど、海外の人からすると、すごく日本的なものに見えたりするみたいで、それは、すごく不思議でしたね。
 
――その日本的なイメージが、”片山さんらしさ”として、評価されているわけですよね。
 
片山:それは嬉しいですね。パリのセレクトショップ「コレット」の店舗デザインを手掛けた、「コレットが大好きな日本人がデザインしたお店」ってことでいいじゃないかと(笑)。コレットが好きで、「デザインしたい!」というすごくピュアな気持ちでやっただけなんです。パリの人に受けるにはどうすればいいんだろうと考えてもわからないですから。僕はインテリアデザインもプロダクトデザインもしますが、そこに違いは感じていなくて、お店だったら「僕が行きたい場所」という僕の中でのリアリティを求めるし、プロダクトをつくるんだったら「僕が使いたいもの」という自分が欲しいものをつくりたい、そうやって自分を消費者のサンプルとしてデザインをしています。
 
――そこは昔から一貫されているんですね。まず、自分が楽しみたいと。
 
片山:そうじゃないと無理ですよね。その気持ちには嘘がないし、「みなさん、これどうですかね?」とお伺いをたてるんじゃなくて、「僕、これが好きなんです!」って言った方がいいなって。そのスタンスでやろうと昔からずっと思っているんです。
 
――青森のプロジェクトも、片山さんが手掛けられているということで、世界的に話題になるかもしれませんね。
 
片山:そうなるといいですね。いい意味で、いますごくフラットになってきていますから。いま、クライアントの8割は海外なんです。日本にいながらにして、いくらでも海外と仕事ができる。そういう意味でも、ほんとにロケーションフリーな感じはありますね。プロジェクトも様々ですし。どこでもおもしろいものをつくれる、そういう時代になっていると思うし、情報ってあっという間に届くわけじゃないですか。ちゃんと自分のスタンスを持って、ちゃんと表現できていれば、みんなすごくおもしろがってくれるんです。だから、いろいろな日本の伝統工芸に携わってる人も、地方の人も、東京っていうフィルターを通す必要はまったくなくて、もっともっといろんな場所で、それがニューヨークでもパリでも関係なく知ってもらえる、そういう環境は整ってきている気がします。逆にいえば、REALJAPANPROJECTで紹介しているような日本の伝統文化や工芸品について、まだ知らない人が世界にたくさんいるわけで、ポーンと出て行けば、点と点がつながって、面になっていく――そういう現象が起きるんじゃないかなと思いますね。むしろいまからがチャンスなんじゃないかな。
 
――そもそも、青森×JR×ワンダーウォールというのも、今までつながらなかったイメージですよね?
 
片山:えぇ。声をかけていただいた方は、勇気あるなぁと思いましたね(笑)。いままでずっと代理店を通さずに、クライアントとダイレクトに仕事をしてきたんです。JR東日本さんもユニクロさんもそう。クライアントも我々にフィルターをかけない分、直接話ができるし、本気で仕事してるので、命がけですよ。だからすごくおもしろいんですね。もちろん、失敗したら大変なのかもしれませんが、気に入ってもらえたら次につながって、さらに可能性が広がっていきます。いまはもう流儀なんてないですから、突然海外でブレイクしちゃったみたいなことが、起きるかもしれない。だから、さきほども話しましたが、日本人としての感性の細やかさだとか、そういうものを素直に出すことが、一番強いんじゃないかなと思うんです。日本の伝統的なものづくりって、すごくレベルの高いことをやっているわけですから、変にデザイン的によそいきにしたりしないでいいんじゃないかと思いますね。
 
――我々にとっても、日本のものづくりにおける伝統工芸品というのは、なつかしさを感じるよりも、むしろ新鮮ですよね。新発見というか。
 
片山:僕は岡山県出身なんですが、岡山でつくられるジーンズが世界的なブランドになっていたりするんですよ。それって、昔からある藍染めの縫製技術などで培われた、伝統的な職人さんの技術の高さが評価されているからなんですよね。今回の青森のプロジェクトでも、地元ならではの素材や技術をいろいろと知ることが出来て、知らないモノがまだまだたくさんあるんだなと、とても勉強になったんです。だから、これからも、どういった”知られざるモノ”が出てくるのか、すごく楽しみですよね。
 
――ありがとうございました。
 
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青森 [A FACTORY」の模型写真
 
Masamichi Katayama
片山正通
1966年生まれ。1992年黒川勉氏とH Design Associatesを結成。2000年自身のオフィス・ワンダーウォールを設立。 クライアントのコンセプトを具現化する自由な発想、また伝統や様式に敬意を払いつつ現代的要素を取り入れるそのバランス感覚が、デザインに溢れる日本はもとより海外においても高く評価されている。代表作に、ユニクロ グ
ローバル旗艦店(NY、ロンドン、パリ、上海、心斎橋)、PASS THE BATON(丸の内、表参道)、colette(パリ)、NIKEフラッグシップストア(原宿)など多数。2003年に続き、2008年には続編となる『Wonderwall Masamichi Katayama Projects No.2』 (オランダ・フレーム社) を世界に向けて刊行。また、今月には、国内初となる作品集『Wonderwall Archives 01』を出版。98年「A BATHING APE」から、今年オープンした「PASS THE BATON」まで厳選された約50点が収められた総収集編となっている。その作品集の出版を記念したエキシビジョンも同時開催。