Interview
with a leading creator vol.21

Sadahiro Nakamura /
Transit General Office

トップクリエイター・インタビュー

中村貞裕(Transit General Office代表取締役社長)

 

photo_Isamu
Ito(lefthands), text
_Shoko Yamasho(lefthands)

 

 

今回のゲストはシドニー発世界一の朝食bills」やNYで人気のチョコレートショップ「Max
Brenner
」など話題の店を次々に仕掛けているトランジット ジェネラル オフィス(以下トランジット)の中村貞裕社長。自らを「ミーハー」と呼び、ニューヨークやLAなど世界の流行りにめざとい中村さんの視点で、日本の職人技のプロダクトの世界を眺めてみると、どう見えるのでしょうか?

 

――トランジットは2001年外苑前のカフェ『Sign』をオープンして以来、次々にいろんなお店をプロデュースしていますね。今やっていらっしゃる業務内容を教えていただけますか?

 

トランジットは基本的に飲食を中心としたオペレーション業が仕事の7割です。『Sign』などのオリジナルの飲食店から始まり、飲食機能を持たない企業、例えばグッチやレクサス、スカイツリー、あとは未来館などの飲食部門のオペレーションも手がけています。また『bills』をきっかけに、企業と資本提携しライセンス飲食ビジネスにも参入、『アイスモンスター』『Max Brenner』などがその例ですね。メキシカンの『グズマン イー ゴメズ』は弊社だけのプロジェクトで、「日本にないフードカルチャーを根付かせる」という長期ビジョンで育てているところです。

 

その他にホテル、商業施設、あと変わったところでは『無拳流空手道』という空手道場の昨年プロデュースしました。グループ会社ではケイタリングサービスやイベントを手がけるトランジットクルー、シェアオフィス・不動産の有効活用などを手がけるリアルゲイトがあります。

 

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――行列店を作る中村さんの目利きぶりは有名ですが、いったいどうやって日本で流行りそうなものを見つけてくるのでしょうか?

 

僕がやっているのは、ひたすら情報をインプットすることで、それを人より真剣にやっているだけです。例えば、代官山のTAUTAYAに行けば『Ane Cam』から『週刊現代』までひたすら立ち読み。本当に真剣に読みます。ありとあらゆる情報を真剣に収集するんです。雑誌だけではなく、SNSもテレビも真剣に見ます。実際に月の半分は海外に行き、地元の情報通とやりとりしたり、『Monocle』などの海外雑誌も読んだり。でもね、インプットだけじゃなく、アウトプットも同じくらい大事なんですよ。能動的にアウトプットする力って、とても大事なんです。

 

――アウトプットが必要、とはどういうことでしょうか?

 

例えばFacebookで美味しいものの情報をいつも発信していると、「こんなの知ってる?」と最新情報を教えてくれる人が集まってきます。いい情報はシェアして、どんどんアウトプットすることでいいものが見つかるんです。アウトプットしないでただ情報を持ってるだけでは、情報は集まりません。マスコミなどの情報産業も同じしくみですよね。

 

――なるほど。プロデュースの仕方について、もう少し詳しくお聞かせください。

 

トランジット・プロデュースというといろんなメディアに掲載されたり、行列が出来たり、話題になることが求められているんですよね。だから僕らが

最初にやるのは、店名とコンセプトに続く、キャッチーな言葉を作ることなんです。例えば『bills』では、店に関するいろんな情報を集める中でニューヨーク・タイムズのレビュー記事に「世界一の朝食」って言葉が使われていたので「これだ」と。

 

さらにお店に関する要素を因数分解していって、できるだけ多くのコンテンツに分けていきます。メニュー、デザイナー、家具などですが、このときさっき言った真剣なインプットが役に立つんです。雑誌を読みながら取材の切り口が頭に入っているので「女子会特集」「デザートという切り口がある」「スタッフがイケメン」など、コンテンツと切り口をできるだけたくさん書き出します。

それが終わったらキャスティングをするんです。メニュー名、家具など、いくつも取材のフックポイントを作るよう意識しながら。そうやって考えぬいたコンセプトだと、お店の形が出来たときには50以上の取材の切り口があることになります。そしたら今度はありとあらゆるコネクションを使って真剣にPRをするんです(笑)。

 

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――勉強になります。その手腕でぜひ、日本の職人技のプロダクトを海外でどう売ればいいか、考えていただけないでしょうか。

 

僕は日本でやりたいことがたくさんあり、強みは「東京」なので、今のところ海外での店舗展開はあまり考えてないんですよね。ただ、海外のものを持ってくる手法で、最近日本の地方の飲食を東京に初上陸させる、というのが出来るな、と気づき、大阪のお好み焼き屋『たまちゃん』をプロデュースしています。

僕は「東京の発展なくして日本経済の発展はない」と考えていて、急逝した先輩・藤巻幸夫さんともよくそういう話をしていました。僕は基本的にミーハーなんですよ。ミーハーと匠の世界って相容れないけれど、そういうミーハーな発想の僕が、職人技のプロダクトのことを考えてみましょうか。

 

――ぜひお願いします。

 

ひとつひとつのブームは作ることができるんです。でもそれを一過性のものではなくトレンドにするには、ライフスタイルに定着させる必要があります。また『bills』を例に出すと、朝食カルチャーが広がったこと、また「これって日本じゃないみたい」と憧れたからこそ、定着したんですよね。

僕らはプロモーションを考えるとき、とにかくたくさん写真を集めるんです。どういったライフスタイルがあるか、どういったカルチャーを根付かせたいか、徹底的に考えるために。職人技のプロダクトを根付かせるためには、モノの良さを言うのではなく、ライフスタイルシーンを見せることが大事です。フォトジェニックなシーンをたくさん集めて発信し、どういったライフスタイルの中に素敵な匠のプロダクトが使われているか、動画でも写真でも見せていくんです。点ではなく、アメーバのように有機的に広がるように。

日本の匠のものを買うことによって、自分の未来がおしゃれになる、それが生活に入り込むとどんな生活の変化があるか、を見せていく。それと、真面目になりすぎないことですね。商品はこれだけ素晴らしいのだから、その素晴らしさを重ねて言っても真面目すぎて広がりがない。ミーハーなテイストをどこかに入れてユニークさを出し、時代感を読んだプロモーションをするのが大事だと思います。

プロフィール

中村貞裕(ナカムラサダヒロ) 

トランジットジェネラルオフィス代表取締役社長

トランジットジェネラルオフィス代表

 

1971年東京生まれ。慶応大学卒業後、伊勢丹を経て2001年に「ファッション、建築、音楽、デザイン、アート、飲食をコンテンツに遊び場を創造する」を企業コンセプトに掲げトランジットジェネラルオフィスを設立。ホテル「CLASKA」シェアオフィス「the SOHO」、カフェ「Sign」レストラン「bills」、チョコレートショップ「MAX BRENNER CHOCOLATE BAR」など多数の施設やカフェ、レストランを手がける他、アパレルブランドと組んだ飲食事業も展開。2015年春に、台湾人気ナンバー1かき氷「ICE MONSTER(アイスモンスター)」、オーストラリア発のプレミアム・メキシカンファイーストフード「Guzman y Gomez(グズマン イー ゴメス)」を表参道原宿にオープン。また、死ぬまでに行きたいNYのペイストリーショップ「ドミニクアンセルベーカリー」もオープン予定。常に話題のスポットを生み出すヒットメーカーとして注目を浴びている。グループ会社にイベント&ケータリング、コミュニケーションプランニング、人材紹介、プロパティマネジメント会社など。「中村貞裕式
ミーハー仕事術」が絶賛発売中。

トランジットジェネラルオフィス http://www.transit-web.com/