このインタビューでは、第一線で活躍をされているクリエイターの方々をお招きし、ご本人の活動に絡めて、ものづくりについてお話を伺っています。
今回のゲストは、モデルやイラストレーターとして仕事をする傍ら、暮らしの空間や生活をクリエイトすることに優れ、多くの人を惹きつける香菜子さん。
香菜子さんは、ご自身の雑貨ブランド「LOTA PRODUCT」のデザイナー務めながら、イラストレーターとして料理本の装丁を手がけたり、ライフスタイルや実用本を出版したり、多方面で活躍されています。
 
香菜子さんはオリジナリティに溢れる視点を持ちながらも、常に自然体でほど良い力加減。そして心にストンと落ちるシンプルさとやわらかな表現があります。
また二児の母でもあることから、アイデアがつまった創造的な家事や家族時間の過ごし方も注目されています。
今回、香菜子さんにお会いし「LOTA PRODUCT」のものづくりと暮らしが豊かになるヒントに迫りました。
 
 
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「LOTA PRODUCT」のポスター
 
 
 
――香菜子さんがものづくりを志したきっかけはなんですか?また、どんな幼少時代だったのでしょうか?
 
私の父は染色家で、栃木にある実家は自宅兼工房でした。なので、とにかくいろんな道具が家にありました。
うちの親はあまりダメと言わない親でいろんなことをやらせてくれたので、小さい頃は働く父のとなりで工作をしたり絵を画いたり、そして飽きたら山に遊びに行くとか、そんな子供時代でした。
山に行ったら木登りもするし、静と動の両方があるような感じでした。通っていた保育園は山を持っていたり、昔の大きいお家を改装して保育園にしていて。そこに住んでいるような用務員のおっちゃんが梅を干していて、みんなでその梅干しをパクって食べたりと、とても自然の多い環境で育ちました。
 
父の工房には反物を広げる長いテーブルのような板場があり、そこでシルクスクリーンや糊置きをやりました。まわりに鍋も沢山あって布糊という染めに使う糊をそこで煮ていたり、ときどき藍染めもやっていたりも。工房はいつも色んな匂いがしていました。
父はもともと着物の図案家だったんですが時代と共に着物があまり売れなくなり、今は屏風やのれん、日傘などを手がけて個展を開いています。ときどき私がデザインしたものを父が染めたりもするんですよ。何が良いかな?と相談を受けることもあります。
 
――ものづくりの出発点にはお父様と自然豊かな工房があったのですね。香菜子さんは何人姉弟なのですか?
 
4人姉弟で私は三女なんです。うちは姉弟みんな美大に行っているのですが、私だけだったのかな?そういうことをやっていたのは。私は父の仕事のお供でよく地方にも行っていました。
一番上の姉は結婚してパリに行き「TSUBAME」という日本の居酒屋をしています。そこは日本酒や瓶ビールとかがあって日本人が行ってホッとする感じのお店です。メニューには、からあげや切り干し大根煮物があったり、ランチは曲げわっぱでお弁当を出したりも。うちの一族の最終的な目標はパリで個展をやる!っていうのがあります。
 
 
 
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――そうなんですね。 香菜子さんが美大へ進学したのは自然な流れだったんですか。
 
幼い頃は服がとても好きだったので、小学校のときは服好きの友人とふたりでスカートを縫って「明日穿いてこうね!」と学校に穿いて行ったりしましたよ。将来は文化服装学園に行こうと、卒業文集の将来夢ではデザイナーと書いていましたね。
当時は、世の中に色んなジャンルのデザイナーがあることを知らなくて、デザイナーと言えばファッションデザイナーだと思っていました (笑) 
ですが、中学校に入って「ファッション通信」というテレビ番組を毎週楽しみに見ていたら、拍手喝さいのショーのラストにファッションデザイナーが出てくるのを見て、あれは無理だ、やめようと (笑)
 
――あはは。でも、そのかたがいまモデルになられていると。もともとファッションがお好きだったんですね。
 
もともと服をつくることが好きでしたね。手芸本で下着のパンツのつくり方を読んで感動して作って穿いたり、サンタさんにお願いするのはミシンだったりとか。お隣が布団屋さんだったので、布団屋さんにいらない布をもらってクッションを作ったりしていました。
 
――その頃から既に自分の好きなものはつくるというのがスタートしていたんですね。
 
はい、なければ作るというのはその頃からですね。小さい頃は、ホームセンターに行くのも大好きでしたよ。父が仕事の道具を買いに行くついでに私も横でこれ使えそうかな?と見ていました。パッケージ屋さんに連れて行ってもらって束で紙袋を買ってもらうとか、それで自分で作ったものを詰めたりだとか。子供のときと今やっていることは変わらないかもしれません。
 
進学はいろいろ調べていくうちに大学に服飾科があることが分かり、姉たちも美大だった影響もあり、美大という選択肢に広がってきました。父の影響もありますし、叔父が陶芸家だったので小さいときから陶芸も作らせてもらっていて「工芸おもしろいな」と思い、女子美術大学の工芸科へ進みました。工芸科に入ると一通りやらせてくれるんですね。その後、最終的には陶芸を専攻しました。
それと同時期の大学1年生の頃、渋谷でスカウトをされてモデル活動をスター
トしました。最初は親に聞いてダメって言われるかなと思ったのですが、このときも誰でもできるわけじゃないからやってみれば?と。
大学卒業と同時に結婚しようと思っていたのでそのタイミングでモデルの仕事からシフトチェンジし、陶芸教室にアシスタントとして勤務していました。つわりが始まって実際に働いたのはちょっとの期間ですね。23歳で完全に仕事を辞めて子供を出産しました。
 
 
 
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――香菜子さんのブランドLOTA PRODUCTは、いつどういう風にできたんですか?
 
ほぼ専業主婦になって子育ての日々がはじまり、それだけではなくてやっぱり何かつくりたい、そうじゃないと自分自身バランスがとれないと思っていたんですね。2人目の子も生まれて少し余裕が出てきたときに、LIFEの相場くん(注1)からレシピ本を出すからイラスト描いてもらえない?と声をかけられたんですね。イラストの経験はないからドキドキしながらやったんですが、自分でも納得できるいいものができました。
そのきっかけとともにやっぱり何か作りたいという想いもあって、ちびっこのスタイが全然足りないから、汚してもいいような大きめのスタイをつくろうと。
“それがあることによって考えがいい方に転がる”そんなものをつくりたいなと思いスタートしました。
その後、子育て中にリラックスしたいという自分のために蜜蝋でキャンドルをつくりました。LOTA PRODUCTは子育てをしていて、こんなものがあればいいのに! と思うものをつくっています。
 
――なるほどですね。ブランドをつくられる前、香菜子さんは陶芸専攻で教室に勤務されていたんですね。
 
将来やりたいことは陶芸なんです。この間仕事で久しぶりに陶芸をやる機会があったんですが、陶板をつくったら3年間みっちりやっていたので体が覚えているんです。他のことを全く忘れて集中してやっている感覚を思い出しました。おばあちゃんになったらこれをやろうと、将来の目標ができました。
 
注1:東京・代々木にあるイタリアンレストラン「LIFE」のオーナーシェフ 
 
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――香菜子さんが好きな日本の感覚や美があったら教えてください。
 
日本人の色彩感覚は優れていますよね。だから日本人はその色を再現できるんですよね。自然の色の感じ方もそうで、浅黄色(あさぎいろ)とか4月の時期だったら芽吹く時期の緑を表す萌黄色(もえぎいろ)とか。名前の付け方もセンスがいいと思います。萌黄色は薄緑色グリーンと黄色が合わさってもっと淡い感じの色、この色を考えると日本人の色の感覚は素敵だなと思います。
 
あと色の話だと、私はフランスの色も大好きで、フランスの色の本にCuisse de Nymph (キュイッス・ドゥ・ナンフ)という淡いピンク色、日本語訳だと「天使のふともも」という色があるんです。あとはエルメスオレンジやジタンブルー「病気の人の顔色・くすんだ青色」など、名前にユーモアもあっていいですよね。
 
 
 
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――香菜子さんとお話ししているとすごく楽しい気持ちになります。好きなことが香菜子さんのまわりにたくさんあるからかもしれません。これはごきげんに過ごすヒントですね。
 
そうかもしれないですね。私は好きなものがハッキリしていて、いまある環境でどれだけ楽しいことをみつけられるのかと考えているかもしれません。

18歳の頃に1か月くらいに入院したときがあったんですね。そのときにも自分のベッドのまわりを少し部屋みたいにしたら入院生活も楽しくなるかもしれないと、姉に自分の部屋にあるポスターを持ってきてもらい部屋っぽく環境を変えました。もしかしたら、そんな経験もベースになっているのかもしれません。

 
 
 
――なるほどですね。いまある環境でどれだけ楽しいことをみつけられるか。
 
あと何かこだわっちゃって動けなくなるはもったいないなと思います。手放すということも大事であったりしますよね。こだわってギューッと握って持っていると、手が空かないから他のものをキャッチできなくなったりして。手を離したらもっといろんなものが手に入ると思うので、コレっと思ったものを日々キャッチできるようにしておこう!と思って過ごしています。
 
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LOTA PRODUCT  香菜子
 
1975年、栃木県生まれ。女子美術大学在学中にモデル活動をスタートし、2005年に母としての着眼から生活を愉しくする雑貨ブランド「LOTA PRODUCT」を設立。その後、イラストレーターとしての活動を開始。暮らしの心地よい感覚を大事にしたライフスタイルが注目されている。
著書に「香菜子Life」(ワニブックス)「普段着の自由研究」(主婦と生活社)「ハレとケ 十二ヶ月、私の季節の楽しみ方」(宝島社)「ずっと好きなもの これからのもの」心地いい暮らしのアイテム77(KADOKAWA刊)などがある。 LOTA PRODUCT / Instagram kanako-lotaproduct